電子カルテ設計構想の見直し:臨床的利便性とデータ収集効率性の両立をめざして
Project/Area Number |
20K10387
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58010:Medical management and medical sociology-related
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松本 聡子 帝京大学, 医学部, 講師 (10422354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 匡聡 東京医療保健大学, 医療保健学部, 臨床教授 (10833668)
渡邊 清高 帝京大学, 医学部, 病院教授 (80422301)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 医療情報 / 医療情報学 / 臨床指標 / Clinical Indicator / Quality Indicator / 医療の質 / 電子カルテ / 多職種連携 |
Outline of Research at the Start |
電子カルテから収集した臨床データを用いて臨床指標を算出するにあたっては、電子カルテにおける「臨床ツールとしての利便性」と「データ収集における効率性」の両立に関する課題を克服する必要があるが、現時点ではそうした課題の解決を担う既存の事業は存在しない。本研究では、わが国の主要な電子カルテベンダーの電子カルテについて上記課題に関し総合的に検討を行い、課題解決のためのノウハウをまとめることにより、わが国の医療機関等における課題解決に寄与することを目的とする。医療情報学等における学術的な価値という点のみならず、わが国の医療の質の改善に対する実務的な還元という点で意義があると考える。
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Outline of Annual Research Achievements |
電子カルテは臨床指標(以下、QI)の重要なデータ源である。しかし、電子カルテは基本的に診療情報を一次利用(患者の診療のための利用)することを目的として設計されているため、診療情報を二次利用(上記以外の目的のための利用-QIの算出を含む)するためのデータベースシステムとしては様々な制約が存在する。本研究は、電子カルテからデータ抽出を行う際の制約への対処法を見出すことを目的としている。本年度は下記を実施した。 【1】データの利活用円滑化のための多職種連携方法に関する検討を行った。電子カルテをデータ源とするQIの活用の流れ(1.QI の系統性の検討、2.臨床現場での QI の選択、3.QI の分母・分子の臨床的に妥当な定義、4.データ抽出可能性の検討とデータ源の決定、5.データ抽出、6.データのまとめ(処理、分析、結果提示)、7.データの解釈、8.改善策の立案・マネジメント)に関与する5種の人材・構成(品質保証に関する委員会、品質保証マネジメント担当者、臨床職員、データ分析者、データ抽出者)のうち、データ分析者とデータ抽出者の連携のポイントを明らかにした。 【2】電子カルテからデータ抽出を行う際の制約への対処法について、5W1Hの明確さという観点から事例の整理・分類を行った。制約の内容を「情報の入力項目の設定に関するもの」「情報の関連付けに関するもの」「正確な情報の登録に関するもの」に大別した場合の対処法と、その実現可能性について示した。 【3】電子カルテデータの品質に関する問題への発生要因と対処法に関する検討を行った。電子カルテから抽出されたデータについて、調査対象施設において品質の問題が生じた事例とその対応を、データの流れ(設計、入力、抽出・処理の3段階)と品質(完全性、正確性、適時性の3要素)の観点から分析を行い、留意するべきポイントを整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下を行い、データ抽出を行う際の制約およびその対処法に関する検討・整理・分類を概ね順調に行うことができた。 【論文掲載】「データの利活用円滑化のための多職種連携」に関する論文が掲載された。電子カルテをデータ源とするQIの活用の流れ(1.QI の系統性の検討、2.臨床現場での QI の選択、3.QI の分母・分子の臨床的に妥当な定義、4.データ抽出可能性の検討とデータ源の決定、5.データ抽出、6.データのまとめ、7.データの解釈、8.改善策の立案・マネジメント)におけるデータ分析者とデータ抽出者の連携の要点と重要性について示した。 【学会発表】「データ抽出を行う際の制約への対処法」「データの品質に関する問題への発生要因と対処法」「データフォームの構造化および情報入力方法の標準化がもたらす一次利用の利便性の向上」「迅速かつ低コストな二次利用の実現による一次利用(例:臨床現場におけるデータ・インフォームドな意思決定)への貢献」について学会発表を行った。現在、それらの内容を発展させ、論文執筆中である。 【その他(原稿執筆)】 医療情報システムの専門誌に寄稿し、「医療の質管理を目的とした診療情報の二次利用の効率化においては、医療情報システムの仕様と運用に関する工夫を行うことが有用である」「二次利用の効率化は、臨床現場におけるデータ・インフォームドな意思決定(現場の臨床職員が、データを判断の材料の一部として使用する)、すなわち一次利用に寄与する」「医療情報システムの仕様と運用に関する工夫を支える基盤は専門家の連携である」「医療の安全と質の向上のためにはどのような臨床指標が必要かについて、国としてさらなる検討が行われることにより、二次利用するべきデータが見出されていく可能性がある。それは、電子カルテの標準機能のあり方に大きな影響を与えると思われる」といった点について論じた。
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Strategy for Future Research Activity |
以下を行い、データ抽出を行う際の制約およびその対処法に関する検討・整理・分類をさらに広げ、深めるとともに、本研究により得られた知見を各医療機関が入手・活用可能となるようにする。 【論文投稿】「電子カルテからデータ抽出を行う際の制約への対処法」「電子カルテデータの品質に関する問題への発生要因と対処法」に関する論文を執筆中であり、今後投稿予定である。 【学会発表】「データフォームの構造化および情報入力方法の標準化が臨床ツールとしての電子カルテ(一次利用)の利便性の向上にどのような効果をもたらすのか」「迅速かつ低コストな二次利用の実現による一次利用(例:臨床現場におけるデータ・インフォームドな意思決定)への貢献」については、学会のシンポジウムや医療専門誌主催のセミナーにおいて発表予定である。また、医療情報システムからのQI用データ抽出における「QIの分母・分子の定義の設定」「データ抽出可能性の検討とデータ源の決定」の作業段階に関連して、データ分析者、データ抽出者、当該QIの管轄部署・委員会、現場の臨床職員の連携による対処を要した事例について、1)入力ルールが不明確、2)電子カルテ内の情報連携が複雑、3)電子カルテと部門システムの間の情報連携が複雑、4)情報の変動、にパターン化し、それら4パターンを「不明確な情報入力ルール」「情報の統合・整合」「情報の変動」の3分野に分類した上で対処法について論じる学会発表も行う予定である。 【その他情報媒体の作成】これまで一連の研究で得られた知見は、Webサイトあるいは書籍(電子もしくは紙)での情報公開を行う予定であり、内容の作成を2022年度に引き続き進める。
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Report
(3 results)
Research Products
(22 results)