繰り返し脳震盪予防のためのセカンドインパクトによる脳損傷重症化リスクの推定
Project/Area Number |
20K11309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59020:Sports sciences-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
青村 茂 東京都立大学, システムデザイン研究科, 客員教授 (20281248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中楯 浩康 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10514987)
張 月琳 上智大学, 理工学部, 准教授 (20635685)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 繰り返し脳震盪 / 頭部へのデッドボール / 頭部衝突事故の再現・解析 / 並進加速度 / 回転加速度 / Diffuse Axonal Injury / ヘルメットの頭部防護効果 / ボールの衝突位置と方向 / セカンドインパクトシンドローム / 多体動力学 / ヒト頭部有限要素解析 / 大脳のせん断係数の低下 / 脳幹のせん断係数の低下 / 脳の最大歪み / 外傷性脳損傷(TBI) / 法医鑑定データ / 外傷性脳損傷 / 有限要素解析 / 複数回打撲 / 動画による事故の可視化 / 事故の再現と検証 / 繰り返し脳震盪による重症化 / セカンドインパクト / 神経細胞衝撃実験 / アストロサイトの活性化 / 血液脳関門への衝撃負荷応答 / 高次脳機能障害 / 外傷性脳損傷(TBI) / 頭部有限要素モデル |
Outline of Research at the Start |
現在、通常の脳震盪に対して有効な診断方法はなく、近年、特にスポーツの現場において繰り返し脳震盪(セカンド・インパクト)による脳損傷の重症化が社会問題化しているが適切な対処法は示されていない。 本研究では多くの脳震盪発想症例に対して、全身モデルと頭部有限要素モデルにより脳震盪の発症の経緯を力学的に詳細に示し、さらにこれらの解析に神経細胞に対する繰り返し衝撃実験により得られた対繰り返し衝撃耐性値を適用することにより、脳震盪が繰り返された場合の脳損傷重症化の危険性を具体的に示す。これらを医療現場に適用し、繰り返し脳震盪へのさらなる注意喚起と具体的な予防方法を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では脳震盪の繰り返しによる重症化を防ぐために、多体動力学と有限要素法を用いて「事故の再現と解析による繰り返し脳震盪の重症化リスクの推定」の検討を行うものである。当初の計画では検証の例題としてアメリカンフットボールの試合中および柔道の全日本選手権で発生したそれぞれ2件、計4件の脳震盪事故を対象とし、損傷事故のビデオ記録を基に、繰り返し脳震盪の事故の再現と脳損傷の重症化がシミュレーション可能であることを示し順調に推移した。 この度、当初の研究期間の3年度(2020~2022)に加えさらに1年度の延長(2023)が認められたため、アメリカンフットボールと柔道の事故例に加え、さらに頭部への死球による頭部外傷が深刻な競技である硬式野球を対象として、繰り返し脳震盪の危険予知の可否を検証した。野球は日本における学校活動中の頭部外傷発生件数が最も多いスポーツでもあり、プレー中の脳震盪発症の90%はボールが頭部に衝突し、その50%は投手が投げたボールが打者の頭部に衝突したケースである。 本申請研究では,事故のビデオデータが完備・公開されているMLB(アメリカ大リーグ)で発生した頭部への死球で、脳震盪を発症した症例2件、発症しなかった症例2件の計4件のビデオ記録を入手し解析の対象とした。これらの4症例は、脳震盪の有無、投手の投じた球速、球種、頭部とボールとの衝突位置が分かるものを選出した。ボールに与える初速度については、並進速度は投手が投げた球速を利用し、回転速度はMLBの各球種の平均回転数を入力した。これまでの種目と同様に多体動力学および頭部有限要素モデルを利用し、実際に野球の試合中に生じたボール衝突事故の再現解析と、ボールの速度、回転数、衝突位置などを変化させたパラメータスタディを基に、ボール衝突特有の脳内力学応答を明らかにし、ボール衝突における脳震盪発症予測因子の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全身多体動力学モデルと頭部有限要素モデルを利用し、実際に野球の試合中に生じたヘルメット上からの頭部へのボール衝突事故の再現解析と、ボールの速度、回転数、衝突位置などを変化させたパラメータスタディを基に、ボール衝突特有の脳内力学応答を明らかにし、ボール衝突における脳震盪発症予測因子の評価を行った。 実際の頭部死球の症例を基に頭部衝突の再現解析を行い、アメリカンフットボールと比較すると並進加速度が約1900m/s2で、より大きな値を示すものの、頭部外傷指標(HIC、SI)は小さく、野球の死球においては衝撃持続時間の短さが影響している可能性が示された。 また、衝突するボールの変数である球速や回転数などが脳内力学応答にどのような影響を与えるのかを解析した結果、衝突位置や衝突方向に加え、球速や回転数による脳内力学応答の影響が大きいことが示された。 さらに死球時のボールの変数の変化が各脳内力学応答の最大値の分布にどのような影響を与えるかを詳細に解析した結果、衝突方向と回転数の変化は最大値の分布に与える影響が大きいことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展望としては以下の2点が挙げられる。 1つは症例解析の症例数を増やすことである。脳震盪の有無を基にした脳震盪発症予測因子の特定では、膨大な症例の解析結果から統計分析を行うことが有効である。そのため、より多くの症例を基に議論することで、新たな知見が得られることが期待される。 もう 1 つは脳の回転加速度と相関のある脳内力学応答の特定である。本研究では、野球では死球時の頭部への衝撃持続時間は短い中で、脳全体の回転加速度が他スポーツよりも大きい値を示し、回転加速度が脳震盪発症に大きな影響を与えていることが予測された。しかし、特定の脳内力学応答との相関は見られず、脳震盪の発症メカニズムの解明における発症因子の特定までには至らなかった。今後、回転加速度、ひずみ速度、累積ひずみ、ミーゼス応力等との相関をより詳細に調べることで、脳震盪の発症因子の特定と発症メカ二ズムの解明に近づくことが期待される。
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Report
(4 results)
Research Products
(1 results)