Project/Area Number |
20K11506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59040:Nutrition science and health science-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 秀明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60313160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90252725)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 血液脳関門 / 血管内皮細胞 / インフラマソーム / NLRP3 / HMGB1 / 運動 / 脳の老化 / 脳の炎症 / 脳梗塞 / GPCR |
Outline of Research at the Start |
超高齢社会を迎えた日本において高齢期の健康を維持することは極めて重要な課題である。習慣的な身体運動を行うことで加齢に伴って起こる様々な脳の病気が予防できることが明らかとなりつつある。脳の血管では血管内皮細胞が互いに強く結合して血液脳関門(BBB)を形成している。様々な脳の病気や、さらに加齢するだけでもBBBのバリア機能の低下が見られる。本研究では、「習慣的な身体運動がBBBのバリア機能を維持し、それにより加齢に伴って起こる様々な脳の病気を予防する」という仮説を立てこれを検証し、またその分子機序を明らかとする。さらにマウスの脳梗塞モデルを用いて身体活動により脳梗塞が予防できるか検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では習慣的な身体活動が血液脳関門のバリア機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を行っている。筋活動にともなって骨格筋から分泌されるホルモン様の物質はマイオカインと総称されるが、本研究ではマイオカイン様の物質が血液脳関門の構造と機能に及ぼす影響を明らかにすることを具体的な目的として研究を行っている。R3年度までの研究からマウスにこのマイオカイン様の物質の受容体のアゴニストを投与する実験を行ったところ、血液脳関門の構造と機能に重要な役割を持つグルコース輸送体GLUT1の制御因子のひとつがマウス脳の海馬領域で顕著に減少することを見いだした。このGLUT1の制御因子は炎症反応において非常に重要な役割を持つインフラマソームとよばれる複合体を活性化することが知られており、R3年度までの本研究で得られた結果からはこの受容体のアゴニストの投与により血液脳関門でのインフラマソームの活性が抑制されることが予想できた。最も代表的なインフラマソームはNLRP3を構成要素として持つため、R4年度ではNLRP3の発現量の変化を検討した。しかしながら、若齢で特に疾患を有していないマウスではコントロールレベルでのNLRP3が検出をすることができず、問題とする受容体のアゴニストの効果も検出することができなかった。文献検索を行ったところ、NLRP3のbasalな発現レベルは低く、その発現量と変化を検討するためには炎症を惹起する刺激が必要であるらしいことが分かった。そこで、in vitroの血管内皮細胞hCMEC/D3の培養を行い、血管内皮細胞の炎症を引き起こす刺激としてHigh Mobility Group Box 1(HMGB1)による刺激を行った。現在、このサンプルを用いてマイオカイン様物質の受容体のアゴニストの同時刺激によりインフラマソームの抑制が起こるか検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R3年度までの本研究で、血液脳関門の構造と機能に重要な役割を果たしているGLUT1の制御因子があるマイオカインの受容体のアゴニストにより減少することが明らかとなった。この制御因子はNLRP3インフラマソームの活性化を行うことが文献的に分かっていること、また、血管内皮細胞の炎症は血液脳関門の構造と機能に大きなダメージを与えることから、このアゴニストの作用ポイントとしてNLRP3インフラマソームは非常に重要なターゲットのひとつであると予想できた。 しかしながら当初の予想に反して、炎症反応を惹起する特別な刺激のない状態のマウスの脳ではNLRP3インフラマソームの活性は検出できないほど低く受容体アゴニストの効果も原理的に検出できないことが分かった。何らかの方法で血液脳関門の血管内皮細胞に炎症反応を惹起する刺激が必要であったが適切な実験系を考え出すのにかなりの時間を要してしまい結果として研究の進捗が遅れることとなった。 その後、脳の血管内皮細胞に炎症反応を起こすのに妥当と思われる刺激としてダメージ関連分子パターン(Damage Associated Molecular Patterns: DAMPs)による刺激を考え、また、実験系としてin vitroの細胞培養系が適切であると考えた。この細胞培養に用いる細胞としては、ヒトの脳血管内皮細胞であるhCMEC/D3が適切であると考えられ培養を始めたが、細胞培養の条件を最適化するステップもかなり手間取ってしまい、R4年度の終わりにやっとDAMPsであるHMGB1での刺激実験を行えるようになった。この部分でも時間がかかり研究の進捗が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初、R2-R4年度の研究期間であったが、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受け繰り返し実験の中断を余儀なくされた。このため研究期間の期間延長承認申請を行いR5年度を最終年度とする申請を行った。 R5年度は、ヒト由来の脳血管内皮細胞株hCMEC/D3を用いて、最も代表的なDAMPsのひとつであるHMGB1によりNLRP3インフラマソームの活性化を行い、マイオカイン受容体アゴニストによりこれが抑制できるか検討する。インフラマソームの活性化は、上流因子としてNLRP3およびAIM2の発現レベルを検討すること、また、下流のインフラマソームで活性化されるcaspase-1、IL-1beta、IL-18の活性化状態を検討することにより行う。さらにインフラマソームの活性化はその細胞の細胞膜に作用し細胞膜に穴を開けその細胞を死に至らしめる。このような細胞死の形態はピロトーシスと呼ばれ、このピロトーシスの進行はGasdermin Dと呼ばれる分子の挙動により検出できる。これらのインフラマソームの下流因子の挙動を検出することによりインフラマソームの活性化とマイオカイン受容体アゴニストの影響を検討する。 さらに、血液脳関門のバリア機能の評価として、hCMEC/D3細胞の経内皮電気抵抗の測定を行う。HMGB1により経内皮電気抵抗が低下しバリア機能が低下することが知られており、マイオカイン受容体アゴニストによりこの経内皮電気抵抗の低下が抑制できるか検討する。 R4年度までの研究で得られた知見と合わせると、あるマイオカイン様物質によりインフラマソームの抑制が起こることが予想され、これが習慣的な身体活動による血液脳関門の制御のひとつであり脳機能全般の改善の分子機構のひとつを解明することにつながると期待でき論文としてまとめたいと考えている。
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