Project/Area Number |
20K12353
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
矢澤 達宏 上智大学, 外国語学部, 教授 (00406646)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | ポルトガル領アフリカ / 植民地主義 / ナショナリズム運動 / 新聞 / 人種主義 / ブラジル / ルゾ・トロピカリズモ |
Outline of Research at the Start |
旧ポルトガル領アフリカの反植民地主義言説を再検討する。反植民地主義は、結果としてのちに独立の立役者となった一部指導者の言動のみに代表させて描かれがちだが、実際には主張、目標、手段いずれもはるかに多様であった。アフリカ人の発行した諸新聞の論説を材料とし、そのことを実証的に示す。ポルトガル領に注目するのは、「異人種間の対立がない」と考えられていたブラジルを引き合いに、植民地主義の解毒、正当化が試みられていたからである。しかし、その植民地主義はアフリカの他地域と何ら変わらぬばかりか、ブラジルの「隠された人種主義」にも通底する普遍性を有することを、ブラジル黒人新聞の論説との対比によりあきらかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
当初予定の3年間(令和2~4年度)からの延長が認められた令和5年度に、それまでコロナ禍の影響で実施できずじまいだった海外渡航調査を1ヶ月強にわたりようやく実現できた。現地図書館、公文書館において史資料を閲覧、複写できたおかげで、前年までの遅れをある程度取り戻すことができた。渡航調査は、本研究の当初から最優先に位置づけていたポルトガルにくわえ、サントメ・プリンシペにておこなった。アフリカの旧ポルトガル領に関しては、当初、モザンビークを調査地の筆頭候補としていたが、過去3年間の研究を通じ、本研究においてサントメ・プリンシペがモザンビークにまさるとも劣らぬ重要性を有していることがわかってきたこと、また渡航調査直前の段階でモザンビークはまだ新型コロナウィルス対策のため入国の際に検査や隔離の可能性があったことから、かぎられた時間で円滑な調査が見込めそうなサントメ・プリンシペに渡航先を切り替えた。 サントメ・プリンシペの公文書館や図書館は、史資料の収蔵状況をインターネット等で公開しておらず、実際に訪れてみないとどういった史資料が、どの程度存在するのか、わからない状況で訪問した。本研究に関連する史資料で、他所では入手できないものは結果としてけっして多くはなかったが、いくつかの貴重な史資料は大きな収穫であった。一方、ポルトガルでは国立図書館や書店で関連する貴重な史資料を数多く入手することができた。とりわけ、リスボン在住のポルトガル領各植民地出身のアフリカ人が発行した新聞のうち、国立図書館に所蔵されているもののほとんどを入手できた。帰国後、史資料の整理・分析に着手し、成果の一部を10月の日本ポルトガル・ブラジル学会の大会にて発表した。また、比較対象に位置づけているブラジル黒人運動についても、共著『ラテンアメリカにおける人の移動』(上智大学イベロアメリカ研究所)として成果の一部を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の大前提となる史資料、とくにリスボン在住のポルトガル領各植民地出身のアフリカ人により発行された新聞の紙面という一次資料を複写のかたちで入手できたことで、ようやく本格的な分析に着手することが可能となった。リスボンで発行されたとはいえ、これら諸紙はポルトガル領の各植民地の問題を中心的に論じており、本研究にとってその持つ意義は大きい。一方、リスボンにおいてでなく、ポルトガル領の各植民地で発行されたアフリカ人新聞に関しては、まだ入手できていないものも多く、今後の課題のひとつとして残っている。いずれにせよ、リスボン発行のものを中心に、まとまった分量のアフリカ人新聞が入手できたので、前年度までの3年間のあいだに二次資料を通じて把握してきたポルトガル領におけるアフリカ人運動の動向や性格とも付き合わせながら、20世紀前半のプロト・ナショナリズム(または萌芽期ナショナリズム)と称される運動の主張内容の再検討を進めている最中である。この分析のとりまとめと、それを踏まえた同時期のブラジル黒人運動との比較については、もう少し時間を要するため、研究期間のさらに1年間の再延長を申請し、認められた。当初の研究計画の6割程度までは進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
再延長として認められた令和6年度を、本研究の締めくくりの年としたい。まずは、前年度に入手した史資料の分析および考察を優先的に進めたい。5月の日本アフリカ学会の学術大会において、その暫定的な結果を口頭発表する予定となっており、ここで得られた意見や助言などを参考にしながら、学術論文のかたちに最終的な成果をまとめようと考えている。日本アフリア学会の学会誌『アフリカ研究』を筆頭候補に、年度中に掲載確定が得られるよう、発表の場を検討していきたい。 本研究の当初の構想の段階では予見できなかった困難が、現時点でひとつ生じている。新聞記事の内容分析をテキスト・マイニングの手法を用いておこなうことを予定していたが、入手した紙面の鮮明度が思いのほか低く、記事のテキストデータ抽出が困難をきわめている。この点に関して、なにか対処法がありうるのか、そうでなければ、代替の分析手法としてどのようなものが適切か、検討が必要である。 もうひとつ、令和6年度中に実現したいのが、ブラジルへの渡航調査である。ポルトガル領アフリカにおけるアフリカ人の運動を再評価するうえで、同時期のブラジル黒人運動との比較はあらたな見地を切り開いてくれるのではと期待している。ブラジルの黒人新聞の紙面は一定程度すでに所有してはいるが、ポルトガル領アフリカにおけるアフリカ人運動と比較するためにあらたに必要な一次資料、二次資料の入手をこころみたい。この比較の成果を学会発表や学術論文として公表するのは、現時点では年度中には難しいといわざるをえない。次年度である令和7年度には確実に公表できるよう、年度内にできるかぎり進めていきたい。
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