越境移動と国民意識の変容ー中国朝鮮族の家族観の変化からー
Project/Area Number |
20K12359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
林 梅 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20626486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 雅英 立命館大学, 経営学部, 教授 (90434703)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 移動と再移動 / 家族観 / 国家 / 民族 / 移住・定住 / 国民意識 / エスニック / 移住エスニック / 越境移動 / 定住 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1)もっぱら移民者の国民意識の変容に焦点を当ててきた従来の越境移動・移住の研究に対して、「移動の連続性」の視点を繰り込む。そして、 2)移民のホスト国における国民意識の変容を、送り出し国との対比のなかで検証してきた従来の研究に対して、生活の実践単位としての家族観念の変化に焦点をあてて検討する。さらに、 3) 既存の欧米の近代国家を前提としたアイデンティ ティの論理に対 して、国家も民族も自明とは見なすことなく、人々の生活の営み という具体的な事象に着目・密着し、アジア的現実の諸相を踏まえたうえで、 移民や難民にまつわる開放的な国民意識に関する新たな社会学理論の構築を展望する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国の少数民族の一つである中国朝鮮族を事例に、朝鮮半島から中国東北へ、そして再び中国東北から日本・韓国へ、という移動と再移動の連続性に着目して、その越境移動・移住の過程で形成・変容された国民意識を、家族観の変化と関係づけて明らかにすることを目的としている。要するに生活者の立場から国家や民族を問い直そうとする試みである。 関連する今年度の業績を研究業績と調査業績からまとめると次のようになる。 まず、研究業績である。①中国延辺大学における「第7回中・日・韓・朝言語文化比較研究国際シンポジウム」で研究発表を行ったうえ、中国延辺大学が発行する『日本語言文化研究 第七輯』に、「『文化の客体化』論の再検討――中国少数民族地域の観光化を事例に」(2024)を題に投稿し、査読で掲載が決まった。②続いて、「トランスナショナルな移動と家族観の変容―-在日中国朝鮮族の老親扶養を事例に」を『在日朝鮮族研究学会2023年大会』で発表した。③そして、国内外の研究者を招へいし、「第二次世界大戦後の在中朝鮮人社会――『満州国』崩壊から延辺朝鮮族自治州創設まで」を題に開催した国際シンポジウムがある。④さらに、海外研究者を招請した「コリアンスタディーズ」で、「中国朝鮮族の移動とエスニシティ」を題に行った特講(2024年1月24日、大阪公立大学杉本キャンパス)と、大阪市外国人教育研究協議会・大阪市小学校教育研究会国際理解教育部が主催した「猪飼野の夢と葛藤とKPOP- 大阪コリアタウン歴史資料館が伝えたいこと」(2024年2月9日、大阪市教育センター)の発表などがある。 次に、調査実施についてである。新型コロナウイルスによる海外渡航の制限が緩和されたことを機に、今年度は従来計画していた海外調査を4回(6月、8月2回、3月)にわたって実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、従来の計画通りであれば、令和2年度~令和4年度の間に、6回以上の海外現地調査、そのデータを用いた2回以上のシンポジウム・研究会開催などを予定していた。だが、新型コロナウイルスによる海外渡航の制限によって3年以上も現地調査が停滞していた。その影響で令和5年度には当初の予定達成のために積極的な海外現地調査を実施した。 ただし、3年以上停滞していた現地調査を、1年で取り戻すことは難しく、また、令和5年には現地調査に専念しただけに、その調査データを生かした研究成果の執筆・発表などは十分とはいえない。 とはいえ、今年度の現地調査では次のような内容で当初予期した目標まで近づくことができた。①中国における現地調査の一回目は、新型コロナウイルス感染症による物理的な移動が移民の日常生活に及ぼした影響について観察・インタビューを行った。2回目の現地調査では、1990年代から2000年代までに日本や韓国へ移動・移住した人々を対象に、彼ら・彼女らがホームランドとどのような関係性を維持しているのかを調べた。3回目の調査では、老親扶養や民族教育言語、不動産事情などのカテゴリーから、移動・移住する当事者とその前後世代との関係に注目して調査を実施した。加えて、②韓国における現地調査では、中国から韓国へ再移動した朝鮮族の家族の問題に関連してインタビュー調査を実施した。 総じて、当初予期していた研究目的の移動・移住がもたらす家族観の変容に関連する重要なデータが取得できたといえる。言い換えれば、本研究計画における海外現地調査は、当初設定されていた「移動・移住」と「再移動・再移住」の二つの部分について、今年度は「再移動・再移住」に関連する観察とインタビュー調査が多くの比重を占めていた。
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Strategy for Future Research Activity |
先述した令和5年の進捗状況に続き、令和6年度には3回以上の海外現地調査と1回以上のシンポジウム・研究会の開催、2回以上の業績の発表などを予定している。 特に、学術研究においては当初予期した目標に向けて、より「移動・移住」に着目して関連する資料収集とインタビュー調査を実施すると、同時に、シンポジウム・研究会の開催と学会参加を通して、研究成果を発表を目指す。 そして、それらの研究活動を通して、本研究が当初設定していた、生活者の立場から国家や民族を問い直そうとする目的に近づく予定である。具体的には、中国の少数民族の一つである中国朝鮮族を事例に、朝鮮半島から中国東北へ、そして再び中国東北から日本・韓国へという移動と再移動の連続性に着目して、その越境移動・移住の過程で形成・変容された国民意識を、家族観の変化と関係づけて明らかにすることを目指す。
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Report
(4 results)
Research Products
(22 results)