北米公立図書館とホームレス問題に関する地理学分析 ーー 都市への権利と社会正義
Project/Area Number |
20K12377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石山 徳子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (70386415)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 都市への権利 / 社会正義 / 公共図書館 / 公共空間 / ケア / 先住民研究 / セトラー・コロニアリズム / 都市先住民 / 批判地理学 / 批判的人種研究 / 都市空間論 / 図書館 / ホームレス / 北米都市 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、北米都市のセトラー・コロニアルな公共空間に展開する、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、障がい、疾病、住居の有無による差別と格差の構造とイデオロギー、社会正義を目指す多様な営みと限界について、公立図書館のホームレス利用者をめぐる議論と、共生に向けた取り組みを事例に、地理学的見地からあきらかにする。これまでは別個に蓄積されてきた、都市への権利、都市の社会正義、ホームレス問題の研究と、多様な背景を有する利用者に関する課題に焦点を当てた図書館学研究を領域横断的に参照し、図書館を地理学的分析対象とする新たな切り口から公共空間と社会正義について考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまで、北米都市に位置する公共図書館が直面する、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、障がい、疾病、住居の有無など、さまざまな要因から生じる差別や格差の構造と、公共空間における自由や平等、あるいは社会正義にまつわる諸問題との交差について調査し、また、検討を進めてきた。 これまでの調査と収集した資料や情報をもとに、1)都市空間に内在するセトラー・コロニアリズム、人種資本主義と交差する、根深い格差構造、2)公共空間、都市への権利、社会正義、3)公共図書館の歴史、哲学、実践、4)公共図書館の職員が日々直面する葛藤、これに応じたさまざまな取り組み、ネットワークの広がり、5)都市への権利と社会正義の概念と、ケアの空間を構築していくプロセスとの交差、について検証し、多角的な分析を行なっている。 1)については批判的人種論や先住民研究、都市論、都市地理学、都市の歴史に関する文献を読み、検証する作業を行なってきた。2)については、主に批判地理学の領域で蓄積されてきた先行研究を検証し、ホームレス問題、住宅事情に関しても多角的に考察してきた。都市部で深刻化するホームレス問題、住宅事情にまつわる当事者による経験にも目を向けるように努めている。3)については、主に図書館学における研究から学び、アメリカ図書館協会の方針、見解にも目を配りながら検討してきた。4)については、現地調査での観察やインタビューによる学びと、先行研究の考察を同時に進めてきた。以上の作業から、5)都市への権利と社会正義、ケアの空間構築について、具体的な事象に照らし、検討してきた。ケアの概念については、コロナ禍を経た現在、特に多くの研究が発信されており、本研究を進めていくなかで重要なキーワードとして浮かび上がってきた。現場における取り組みでも、再三にわたり言及される概念となっており、更なる検証が必要とされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究期間初年度に特に深刻化した新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により、海外出張による情報収集が必須の本研究は大きな影響を受けたため、研究の進捗は大幅に遅れ、そのため現在、延長の機会をいただいている。国境を越える移動や関係者との面会について制限がかかり、調査を進めることができなかったからである。ただ、2022年度以降、北米での調査が可能になり、主に大学図書館における文献収集や、研究者や図書館職員との面会、意見交換も行うことができるようになった。 大学図書館においては、図書館学、歴史学、地理学、都市論、人類学、社会福祉学、法学、哲学などの学術領域で蓄積されてきた先行研究、公共図書館による試みや、都市の貧困、住宅、ホームレス問題に関する一次資料の収集を行なってきた。また、貧困、人種、ジェンダー、あるいは構造的、制度的な格差や差別の問題を専門とする研究者との対話と情報交換も続けている。 現地調査においては、都市における複数の公共図書館、その周辺を訪ね、歩いてきた。貧富の差の拡大、ジェントリフィケーションなどに起因する不動産の高騰と住宅事情の悪化などを目の当たりにした。またこれについて、各種報道、研究者による分析、各レベルの政府機関や民間団体による調査結果に照らし合わせながら考察を行なっている。 とくに、サンフランシスコ公共図書館では職員の方々の多大な尽力を得て、現役世代、さらには既に引退した関係者とのインタビューを重ね、貴重な情報を提供していただいている。北米ではじめて、フルタイムのソーシャルワーカーとして同図書館に勤務する職員の方をはじめ、本研究に今後もご協力いただく方向性を確実に構築することができている。 今年度中に、この問題をテーマにした論文の出版を予定しており、その執筆を続けている。また、資料分析、現地調査をもとに、学会等の場でも発信していけるように準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集してきた資料を読み込み、内容の整理、および検討を続けるのと同時に、カリフォルニア大学図書館等で、新たに資料を開拓する作業を行う。ホームレス人口に関する問題、これに関わる薬物などへの依存の問題、さらには貧富の格差の拡大は、アメリカ社会でさらに深刻化している。特に、カリフォルニア州サンフランシスコは、社会矛盾が顕著に現れている場所であり、公共図書館での葛藤は複雑なものになっている。これに合わせて研究の深化、あるいは社会運動の動きが認められるため、先行研究の検証、情報のアップデートを確実に進めたい。 今夏には、カリフォルニア州ベイ・エリアへの海外出張を予定している。公共図書館における取り組みにある、移民や難民を含む国際文化的多様性、あるいは人種、ジェンダー、セクシュアリティに関する多様性、あるいは深刻な貧困、疾病、住宅問題を抱える利用者や、刑務所との連携、識字教育に至るまで、さまざまなケアのプロセスとのつながりについて、学びを深めていきたい。またこれについて、地理学分析によって、いかに新しい知見の創出につなげられるのか、考えていきたい。 現在執筆中の論文を完成させると同時に、学会等での発表を含む、発信の段階への準備作業を続ける予定である。
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Report
(4 results)
Research Products
(5 results)