朝鮮半島の植民地遊廓の形成・展開・変容~解放後韓国への連続/非連続に注目して~
Project/Area Number |
20K12454
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80030:Gender studies-related
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
金 富子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40558102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 圭木 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (40732368)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 朝鮮 / 植民地公娼制 / 植民地遊廓 / 釜山 / 娼妓 / 性売買 / 性売買集結地 / ソウル / 妓生 / 芸妓 / 芸能 / 遊廓 / 公娼制 / 貸座敷 / 植民地 / ジェンダー / セクシュアリティ |
Outline of Research at the Start |
本研究がめざすのは、朝鮮半島の各植民地都市における遊廓形成とその展開・変容に関する個別事例を積み重ね、その全体像と特徴を明らかにすることによって、ジェンダー・セクシュアリティの視点から公娼制という国家的性管理制度を必要とした植民地支配のあり様を問い直し、当時の朝鮮社会や植民地解放後の韓国に何をもたらしたのかを検証することにある。 具体的には、日本で十分に研究されていない①植民地期の朝鮮南部の釜山、大邱、1930年代以降のソウル(京城)等、②植民地期の朝鮮北部の平壌、元山、興南、羅津等、③朝鮮南部の解放後韓国への影響も含めて、文献調査、現地フィールドワーク、インタビュー等の手法で明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画で予定していた訪朝調査がコロナ禍のため実現できなかったが、1)釜山への訪韓調査、2)2回の公開セミナーの実施、3)関連する著作の監訳・出版を行った。 具体的には、1)2022年12月、釜山の女性人権センター・サルリムの案内で朝鮮初の遊廓である旧佐須土原遊廓跡地、それが移転した旧緑町遊廓跡地を踏査した。後者は解放後に玩月洞と名を変え性売買が存続した。サルリムでは性売買の現状と性売買女性支援に関するレクチャーを受けた。翌日は釜山在住の研究者の案内で、旧遊廓跡地の影島および釜山駅テキサス通りを踏査した。2)遊廓社会科研(代表:佐賀朝氏)と共催で以下を行った。まず、2022年7月に殿垣くるみ氏(一橋大学院生)の報告により「1910ー1920年代福岡県における性売買業者と地域社会」をオンラインで開催した。福岡は日本に渡った朝鮮人女性が「酌婦」化された地域である。吉見義明氏(中央大学)、佐藤敦子氏(大阪公立大学)がコメントをして全体討論を行った。次に、2023年3月に「一次史料に基づく「遊廓社会」史研究の到達点と課題」を開催し、本科研の共同研究者の加藤圭木氏が「植民地朝鮮における性買売研究の展望―地域社会史の視点から―」を報告し、会場・オンラインの参加者から質疑応答や全体討論を行った。3)現代韓国の性売買の現場に関するシンパク・ジニョン著作『性売買のブラックホール』を監訳のうえ出版した。 以上のように、1)植民地朝鮮南部に関して朝鮮初の遊廓が形成された釜山を踏査し、現在の性売買の現状と女性支援に関する最新情報を入手したこと、2)戦前福岡の性売買に関する報告、植民地朝鮮北部の性売買に関し地方財政という新しい視点での研究を提案した報告を行い、専門的研究者と討論・交流したこと、3)現代韓国の性売買に関する著作を監訳・出版したことは、今後の共同研究の展開に資するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
訪朝・訪韓して植民地遊廓に関する現地調査を行なうという主要な研究課題のうち、訪朝調査に関してはコロナ禍のため渡航できず遂行できなかった。しかし、訪韓調査に関しては、朝鮮最初の遊廓があった釜山の旧遊廓跡地4ヶ所を踏査し、釜山の性売買の現況と性売買女性支援に関する最新の情報をヒヤリングできた。釜山の遊廓研究者や性売買女性を支援する活動家たちと交流を深めたのも収穫だった。このように釜山の遊廓形成と展開、解放後韓国から現在に至る経緯や現状に関して、通時的な研究の見通しがたったことは大きな成果と言える。また、副テーマである現代韓国の性売買現場についての著作を監訳・出版したことは、大きな成果であった。 さらに、戦前の福岡および植民地朝鮮北部の性売買に関するセミナーを遊廓科研との共催で開催し、専門研究者と意見交換や研究交流を深めた。前者に関して福岡に渡航した朝鮮人女性の「酌婦」化を研究する点で重要な歴史的前提と今後の課題を確認できたこと、後者に関して朝鮮北部の遊廓・性売買について地方財政から研究する視点は日本の遊廓・性売買研究でも行われていない新しい視点であることが確認できたことは、それぞれ収穫であった。 以上のように、訪朝調査は不可抗力により実現できなかったものの、それ以外では研究の進展に資することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2023年度において、訪朝調査に関しては、朝鮮民主主義人民共和国のコロナ禍の状況が不明であるため見通しがたっていない。そのため当面、資料や文献の収集・調査を中心に進める方向である。一方、訪韓調査に関しては、釜山以外での踏査を模索したい。また副テーマである解放後韓国の性売買の現場に関して、活動家はもちろん、当事者たちの発話を聞きながら、交流を深めていきたい。 このように各自が担当地域に関する資料・文献調査を引き続き行いながら、以下のように研究課題を推進したい。1)解放後韓国への旧遊廓から性売買集結地への連続に関連して、韓国の性売買経験当事者たちを招待して研究集会やセミナーを開催し、比較の視点で日本の性売買集結地の共同踏査を実施する。2)朝鮮半島南部の植民地都市における遊廓形成と解放後の性売買に関する訪韓調査を模索する。3)最終年度のまとめとして、内部講師を立てて朝鮮北部の遊廓形成に関する公開セミナーを開催する。以上の形で、研究を進めて行きたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(23 results)