Project/Area Number |
20K12777
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
田原 彰太郎 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (90801788)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 自律 / 寛容 / ライナー・フォアスト / 人権 / 実質的構想 / 価値中立的構想 / カント実践哲学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、現代の自律理論を基礎として自律と道徳的強制との関係を明らかにする。自律と道徳的強制とは通常、道徳的強制が各個人の自律を制約するという仕方で関連付けられる。しかし、現代の自律理論のなかには、行為者が自律的であるためにはある種の道徳的強制を受け入れなければならないという仕方で、道徳的強制を自律の条件として位置付ける立場がある。この立場は自律の実質的構想と呼ばれる。本研究の主たる研究対象となるのが、この実質的構想である。本研究は、この実質的構想という観点から、自律とは何であり、自律を尊重するとは何をすることなのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、1つの論文を公刊し、3回の口頭発表を行った。 2023年5月には、ライナー・フォアストとエヴァ・ブッテベルグが主催のワークショップ「kritische Theorie und kulturelle Differenz: Ein Deutsch-Japanischer Dialog」(フランクフルト大学にて開催)にて、「Kritische Theorie der Toleranz in japanischen Faellen」というタイトルでドイツ語での口頭発表を行った。この発表では、フォアストの寛容論を日本における「日の丸・君が代問題」に適用し、この問題を寛容という切り口から分析するとともに、日本の事例をドイツの研究者に紹介した。 2024年2月には、この口頭発表をもとに作成したドイツ語論文「Kritische Theorie der Toleranz in japanischen Faellen」を『人文社会科学論集』(茨城大学人文社会科学部紀要)第三号にて公刊した。 2023年9月には、大阪大学において開催された「第14回大阪哲学ゼミナール」にて、「人権理論におけるカント的自律の現代的意義」というタイトルのもとで口頭発表を行った。この発表では、2022年度に報告者が翻訳を出版したオリヴァー・ゼンセンの「人権の根拠としての自律」とライナー・フォアストの「人権の意味と基礎」の内容を紹介し、そのうえで主に自律という観点から両論文の批判的検討を行った。 2024年3月には、東北大学において開催された「批判的社会理論研究会 第44回研究例会」にて、「「道徳的自律と自律的道徳」の読解」というタイトルのもとで口頭発表を行った。この発表では、ライナー・フォアストの論文「道徳的自律と自律的道徳」の詳細な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究においては、(1)ライナー・フォアストの寛容論と自律論、(2)カント実践哲学と実質的構想の接続という二点において、とくに進展があった。 (1)フォアストの思想に関して、まずは、昨年度に引き続き彼の寛容論の研究を行った。昨年度からの研究成果をまとめ、上述のワークショップにて口頭発表を行い、フォアスト自身とも議論をすることができた。この口頭発表とそれに基づく論文は、彼の寛容論を日本の事例にも適用できることを示したという点でも、日本の事例をドイツ語圏研究者に紹介することができたという点でも有意義であった。さらに、この口頭発表と論文では、この問題に関する事例分析を通して、自律的行為者を模範としてしまうことの問題点も指摘することができた。その後、フォアストの「道徳的自律と自律的道徳」という論文の分析をすることによって、彼の構成主義的立場における道徳的自律の基礎的位置づけを明らかにすることもできた。 (2)カントの実践哲学を基礎として、実質的構想が抱える問題を考察した。自律的行為者は道徳的強制を受け入れねばならないということが、実質的構想の中心的テーゼである。しかし、道徳的強制とは、一般的に言えば、他者が定めるものだと考えられている。そうであれば、道徳的強制の受け入れは、行為の当事者にとっては規範の押し付けである場合もあり、この場合には自己決定を本質とする自律を損なうことだとも思われる。この問題を解決するため、カントの自律論を基礎として、通常は「他者が決めた」と考えられている道徳的強制を「自分が決めた」ものとして理解する可能性を追求した。この研究の成果を2024年7月に早稲田大学にて開催される早稲田大学哲学会での口頭発表にて発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には以下の成果発表を予定している。上述のカント実践哲学と実質的構想を接続する試みを、上述の早稲田大学哲学会にて口頭発表する。さらに、この口頭発表に基づく論文を作成することも目指す。 それ以外には、今年度は本研究計画の最終年度であるゆえに、本研究計画に属するこれまでの研究の中で成果発表に至っていない部分を中心に研究を進め、成果発表のかたちにまとめることも試みる。
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