The Concept of Subjectivity in Enlightened Societies - Reading Kierkegaard from Adorno's Perspective
Project/Area Number |
20K12788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Hosei University (2022-2023) Gakushuin University (2020-2021) |
Principal Investigator |
吉田 敬介 法政大学, 文学部, 講師 (50847720)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | S・A・キルケゴール / Th・W・アドルノ / Chr・メンケ / 批判理論 / 主体性 / 美的経験 / 啓蒙 / 近代化 / 修正するもの / 内面性 / 自己 / Ch・テイラー / 罪意識 / キルケゴール / アドルノ / 反知性主義 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、Th. W. アドルノの啓蒙論の視座からS. A. キルケゴールの思想を捉え直し、その社会哲学上の意義を検討する。その際キルケゴールは、社会という外的世界に背を向けた内面性の思想家としてではなく、社会の啓蒙にアンビバレントな態度をとった者として解釈される。すなわちキルケゴールは、一方では近代的啓蒙に反対し非合理な決断を称揚する反知性主義の傾向を示す者として、他方では理性の自己神格化を戒め啓蒙に自己反省を促す「修正」の思想家として、捉え直されるのである。本研究はここから、宗教がその権威を失っていく合理化の時代になおも反省的に超越に関わろうとする近代的主体性モデルを読み取ることを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、前年度までの研究成果を引き継ぎ、S・A・キルケゴールの思想とTh・W・アドルノ以来の批判理論との繋がりに着目して、そこに読み取ることのできる主体コンセプトの展開を考察した。その際、一方では、キルケゴールからアドルノにかけての主体性概念の批判的受容の過程について、他方では、主体の美的経験に関する21世紀の批判理論における議論について、それぞれ検討した。 令和5年5月の法政哲学会第43回大会のシンポジウム(「キルケゴールを軸とした20世紀思想の比較検討」)における研究報告「主体性を問うことのアクチュアリティ――アドルノのキルケゴール受容からの一試論」では、アドルノによる批判的キルケゴール受容において、絶対的・同一的主体を内在的に破りつつ生成する主体コンセプトの引継ぎがなされていることを明らかにした。 加えて、令和5年11月の唯物論研究協会第46回総会・研究大会(第3分科会「フランクフルト学派の現在」)における研究報告「クリストフ・メンケの美学と批判理論――美的な自然本性についての近代的主体の自己反省」では、21世紀の批判理論の哲学者であるChr・メンケの美学理論から、啓蒙され近代化された社会において美的経験が主体を解放する作用を持ちうることを明らかにした。 以上の考察を通して、キルケゴール思想から批判理論へと主体コンセプトの批判的展開が跡付けられること、そして現在の批判理論のとりわけ美学に関する議論に主体性論の独自の展開が見られることが、示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、予定していた研究計画に対して、やや遅れている。アドルノの視座からキルケゴールを読み、そこから啓蒙された社会における主体コンセプトを検討するという本研究の課題に関して、令和5年度の取り組みから主として以下の二点について進展が見られたものの、同時にいっそう詳細な分析の必要が生じている。 第一に、キルケゴールからアドルノへと主体性概念の引継ぎがなされていること、とりわけ「他なるもの」の意識とともに神話的な自己同一性を内在的に突破する主体のあり方が展開されていることが、両思想家の主体性論の検討から確認された。この点については、法政哲学会第43回大会での研究報告において、一定の成果が示された。とはいえこの主体性論の展開は、アドルノによるキルケゴール受容に関する研究とともに、いっそう詳細に跡付けられるべきである。 第二に、アドルノ以来の批判理論の系譜において、社会によって規定された自己同一性から主体が解放される際、美的な経験が注目すべき役割を果たしていることが明らかとなった。この観点については、唯物論研究協会第46回総会・研究大会での研究報告において、一定の方向付けが示された。しかし美的経験と近代的主体の関係、さらにはそのキルケゴール思想との関連に関しては、さらなる考察が必要である。 令和5年度には、対面で開催された幾つかの国内学会(法政哲学会、キェルケゴール協会、唯物論研究協会)や、法政大学で11月に開催された美学・芸術学に関する公開シンポジウム(「《夜》を描いた画家たち――実存の奥底から」)、大東文化大学で12月に開催されたキェルケゴール・セミナーへの参加を通して、本研究の考察をいっそう広く・深く展開するための重要な契機を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、本研究に関するこれまでの研究成果を整理・総括した上で、アドルノ以来の批判理論の系譜との関連から、キルケゴール思想の社会哲学的意義を考察する。その際にはまずもって、アドルノによる批判的キルケゴール受容を詳細に検討し、そこに展開されている主体性概念を正確に跡付ける必要がある。さらには、現在にまで至る批判理論のとりわけ美学理論を参照しつつ、近代社会の枠組みのなかでなおも可能な主体の超越経験のあり方を明らかにすることが求められる。こうした考察を通して、本研究の最終成果として、啓蒙された社会における主体コンセプトを提示することを試みる。 本研究は、これまでに発表してきた成果を土台とし、さらなる文献(キルケゴールやアドルノら批判理論の一次文献や関連する二次文献)の読解およびその分析を通して進められる。その際には、これまで同様、研究発表や専門家との議論が重要な役割を果たすため、令和6年度も引き続き様々な学会・研究会へと参加する予定である。また、令和5年度に学会での研究報告として発表した内容を中心に、研究成果をさらに展開し、研究論文などの形で公の議論へと広く開いていくことに努めたい。
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Report
(4 results)
Research Products
(11 results)