Project/Area Number |
20K12813
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
鈴木 耕太郎 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90824863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 牛頭天王信仰 / 心経会 / 祭文 / 正月儀礼 / 市神 / 祇園祭 / 天王祭 / 八王子信仰 / 牛頭天王 / 祇園社 / 行疫神 / 除疫神 / 『牛頭天王暦神辯』 / 陰陽道 / 『簠簋内伝』 / 寺社縁起 / スサノヲノミコト / 縁起 / 『牛頭天王暦神辨』 / 『釈日本紀』 / 『日本書紀纂疏』 / 悪神 / 中世神話 / 宗教者 / 縁起・祭文・注釈書 / テキスト研究 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、中世から近世への転換期に、牛頭天王信仰がどのような変遷、展開をしたのかを詳細に捉えることを目的とする。それは単に牛頭天王信仰研究を深化させるだけでなく、牛頭天王信仰を通して日本の前近代における信仰/宗教を捉え返す上でも必要不可欠となる。そのため、 【1】室町時代後期から江戸時代前期に作成された牛頭天王信仰に関する諸テキスト・史料類の整理と掘り起こし。 【2】【1】のテキストの読解および検討。また中世に作成されたテキストとの比較検討。 【3】【1】のテキストを作成した「宗教者」の宗教的背景・思想に関する考察。 の3点を本研究における主要課題にすえ、これら課題の解消に努めるものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられたことなどもあり、積極的に資料調査を行った。まずは2022年度に引き続き、奈良県大和郡山市にある東明寺へ資料調査(一部、資料撮影)を行った。なお、申請者が主催する研究会(牛頭天王信仰研究会)メンバーにも同行してもらった。すでに同寺が所蔵する『心経会之祭文』については、予備調査段階から着目し、同寺の許諾を得て翻刻作業を行っていたが、より鮮明な写真の撮影を行うことで正確な翻刻ができた。そのうえで、申請者含む6名の研究会メンバー連名で下記論考を発表した。なお、同寺が所蔵している牛頭天王信仰に関するその他資料についても研究会メンバーと連名での論考化を目指し、現在執筆中である。 【論考】鈴木耕太郎・川邉絢一郎・平陽介・中村一輝・西野浩二・室田辰雄「鍋蔵山東明寺所蔵『心経会之祭文』に見る牛頭天王信仰――正月・心経会を考える」『蓮花寺佛教研究所紀要』17号、2024年3月刊行。 【その他】高崎経済大学地域政策学部観光学科編『大学的群馬ガイド』昭和堂、2024年3月に「上野国の伝説とその足跡」を寄稿したほか、科研費のテーマにもかかわる「市神・牛頭天王と群馬の祭り・祭礼」と題するコラムも同じく寄稿した。 また、玉村町歴史資料館の依頼で2023年9月2日に「祇園祭と牛頭天王――夏の祭礼にこめられた人々の願い――」と題した学術講演を行っている。 さらに2024年3月24日には群馬県立女子大学で開催された歴史文化資料保全首都圏大学協議会にて「「縮小」する民俗事象 ――群馬県内の祇園祭・天王祭を中心に――」と題した報告を行っている。 さらに上述した牛頭天王信仰研究会のメンバー数名と奈良県天理市にある寺院の祭礼について民俗調査を行ない、牛頭天王信仰の確かな足跡が残るものと確認した(この点については、民俗学的視座からの論考として発表する予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初、各地に残存しながらも未だ研究史上で位置づけられていない、あるいは未調査の牛頭天王信仰に関わるテキストや史料の調査に重きを置いていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、そもそもそうした調査活動を見合わせざるを得ず、結果として研究計画に含まれていた東北地方や中国地方における調査は未だ目処が立っていない。この点を見れば本研究は「やや遅れている」状況にある。本研究は当初、2023年度が最終年度であったが、上記のような事情から本研究自体をさらに1年間延長している。 ただし、2022年度後半より始めた奈良県下における新出史料の調査や民俗調査では、2023年度に1本の共著論考を出したほか、数本の論考にまとめられるだけの成果が出ている。現在、それらの論考を鋭意作成中だが、2022年度後半以降の活動により遅れを取り戻している実感はある。それは本研究当初の目論見でもあった、地方における未調査状態に置かれている重要な史料の存在を確認できたこと、さらに「民俗」の事例として現在も続く祭礼に近世以来の牛頭天王信仰のあり方が反映されていることに気付けたことが大きい。 そのため、研究の方向性に確信が持てたかどうか、という意味では2022年度前半までとそれ以降とでは大きく異なる。新型コロナウイルス感染症が蔓延するなか、思うように調査が進まなかった2022年度前半までの状況では、研究の方向性そのものを見直さざるを得ず、成果は出していてもなかなか本研究が当初掲げていた到達点が見えていなかった。しかし、2022年度後半からは当初掲げた研究計画通りの調査を行ない、2023年度は再調査および論文化できたこともあり、研究の方向性が間違っていなかったという確信につながった。残念ながら2020年度以降、3年間の遅れは大きく客観的には「やや遅れている」が、上記の通り着実に進んでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはこれまで繰り返し述べてきた奈良県下における調査の結果、奈良県大和郡山市・東明寺で発見することの出来た新出史料に基づく論考化を進める。これも既に記述しているように、申請者が主催する牛頭天王信仰研究会メンバーとの共著になるが、申請者が主体となって取り組みつつ、同研究会メンバーの知見を集めた厚みのある研究成果になるであろうと自負している。また同じく奈良県天理市の寺院における祭礼が往時の牛頭天王信仰に基づく祭礼の形態をとどめているため、こちらも上記研究会メンバーと共著論考として出すつもりでいる。なお、2022年度に奈良県下で牛頭天王信仰に関わる「講」(天王講)の実態について聞き書き調査を行なっている。これについての調査報告も出す予定である(なお、この聞き書き調査の中心は申請者ではなく、上記研究会メンバーであるため、申請者は共同研究者の1人として調査報告に名を連ねさせてもらう次第である)。 残念ながら、これから新たな地域での本格的な史料調査は時間的な制限もあり厳しいが、予備調査のようなものは行えたらと考えている。現時点では、静岡県を中心とした東海地方を念頭に置いているが、場合によっては関東圏内で行うことも想定している。すでに埼玉県川越市の近世の未翻刻史料を用いて短い論考を執筆中であり、埼玉・群馬両県ではそうした研究の可能性も十分にあると考えている。 また奈良県下の民俗調査で当初の想定以上の成果が明らかになったため、本格的な調査は難しいものの祭礼調査も視野に入れたいと考えている。
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