Project/Area Number |
20K12830
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
市岡 聡 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 研究員 (80788795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 地方における仏教信仰 / 立山信仰と立山地獄 / 在俗者の神仏に対する信仰 / 『法華験記』が受けた『法華伝記』からの影響 / 畿内周辺における仏教信仰 / 霊山院 / 地方の民衆信仰 / 畿内の仏教信仰 / 法華験記 / 霊山院式 / 霊山院釈迦堂毎日作法 / 立山 / 蟹満寺 / 法華経信仰 / 説法 / 在俗者教化 / 女人禁制 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、古代から中世への転換期に編まれた『法華験記』を思想史的に読解することによって、法華経信仰、説法、地方霊場の成立などの観点から平安時代の仏教思想史を解明し、この時代の文化的・思想的特質を明らかにしようとするものである。本研究では、①『法華験記』における説法、特に在俗者に対する教化の様相を解明する。②東アジアの法華経信仰の中に日本の『法華験記』を位置付ける。③『法華験記』の成立の事情を明らかにすることによってその史料的性格を解明する。これによって、平安時代における女人を含む在俗者に対する説法と教化の姿を明確化し、東アジアにおける『法華験記』の位相と特質を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
『法華験記』第124話に登場する立山信仰及び立山地獄に関する発表を「神仏融合研究会」にて実施し(7月)、現地調査を8月に実施した。この発表では立山開山について、帝釈岳について、在俗者教化との関連について論じ、現地調査で自説の妥当性の確認を行なった。噴火活動が見られる場所を地獄と呼ぶ営為は、在俗者教化に密接に関係すると考えられることから、大分県中部地域及び日田玖珠地域にある火山地域を訪問し、現地で資料収集及び巡検を実施した。立山地獄と他の地域の地獄との比較検討は、地獄を用いた在俗者教化という視点では重要かつ意義深いものと考えている。他方、「地獄」が付けば全て同じというわけではない。そこで、日本全国にある「地獄」を含む地名に着目し、国土地理院地形図で「地獄」を含む場所を検索し、地形の確認作業を実施した。また、岡山市にある造山古墳の「地獄田」(12月)と愛知県東浦町にある「地獄谷」を巡検し、現地確認を行なった。 『法華験記』第126話に登場する乙寺に関する調査を、新潟県上越地方及び下越地方において実施した(5月)。乙寺については種々の論考があるが、現地における資料調査及び地形確認と『法華験記』第126話の精読等の作業から、乙寺が転々移転して現在地へと遷っていった可能性が高いことを確認した。 上記以外では、『法華験記』に登場する兵庫県にある雪彦山付近の巡検(8月)、滋賀県における観音信仰とそれに対する在俗者の信仰調査(6月)、三重県伊勢地域における西国三十三所巡礼と在俗者の信仰に関する調査(4月)を実施した。 東アジアにおける『法華験記』の位相と特質を明らかにするため、「『法華伝記』を読む会」に参加し、唐代に撰述された『法華伝記』にある「聴聞利益第十一」の講読を実施した。これにより『法華験記』に掲載された話で『法華伝記』から影響を受けたと考えられる話が複数存在することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内調査については、コロナ5類移行により多くの地域での調査活動を行なうことができた。これにより地方霊場と地方寺院、特に立山と乙寺に関する考察は大きく前進したと考える。他方、中国における調査は、いまだコロナウイルスに対する懸念が残るのと、調査活動の困難さから、依然として実施ができていない。東アジアと『法華験記』との関連性の検討については「『法華伝記』を読む会」の実施により前進させているものの、現地での巡検ができていないことから、進捗状況は上記区分にあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響は以前に比べると格段に少なくなったが、中国国内での調査活動を実施は依然として厳しい状況にある。したがって、中国に関する調査は国内での文献調査を引き続き実施する。また、今年度も継続して「『法華伝記』を読む会」を開催・参加し、中国における法華経信仰と在俗者教化に対する理解を深めるとともに、『法華験記』への影響関係を引き続き調査していきたい。 国内での調査は『法華験記』に記載された地方霊場、地方寺院に関する説話の調査・検討を中心に実施するとともに、比叡山横川にあった霊山院の資料調査及び現地巡検を実施していきたい。これにより、『法華験記』に通底する在俗者教化の思想を検討していきたい。また、中央・地方に限定することなく在俗者の信仰、特に観音信仰についても検討できればと考えている。
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