Project/Area Number |
20K12953
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高畑 悠介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20806525)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | D.H.ロレンス / 『恋する女たち』 / 『チャタレイ夫人の恋人』 / 『虹』 / 他者性 / 視点 / 『息子と恋人』 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、D.H.ロレンスの研究において手薄になっている形式面の考察を補完するため、『息子と恋人』『虹』を中心に、キャラクターの視点操作の問題を吟味する。加えて、通説となっている、バフチン的な対話性を体現したロレンス文学という理解を批判的に再検討することも目指す。というのも、上記の作品における視点操作を精査した結果浮かび上がってくるのは、作中で濃厚な他者性を帯びた人物として設定されているキャラクターの他者性を否定するようなふるまいであり、これはロレンス文学のバフチン的対話性という通説を覆し得るものだからである。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度『チャタレイ夫人の恋人』について査読誌に掲載した論文(「D.H.ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』におけるユートピアの脆さと肛門性交の描写の意味」『テクスト研究』19(2023):23-41)の観点を『恋する女』に適用した論文を査読誌に投稿し、掲載に至った(「『恋する女たち』におけるロレンスのひるみ――バーキンの特異なビジョンへの確信の欠如とその余波への小説的対処策」『テクスト研究』20(2024):3-22)。当該論文では、作者の分身としての側面を持つルパート・バーキンが作品序盤で示す理想の男女関係についての特異な哲学的ビジョンが、その後恋人であるアーシュラからの批判的働きかけを受けて事実上取り下げられている点に着目し、それを件の特異なビジョンの説得性や妥当性についての作者の確信の欠如による一種の妥協と見た上で、同作が示す不可解さの多くがこの妥協の余波に対する小説的対処策とみなし得ることを論じた。具体的には、作品後半におけるバーキンのジェラルド・クライチに対する男性としての優位の(不自然な)強調が、上述の妥協によりキャラクターとしての強度を減じることになったバーキンに対する一種の補償とみなし得ること、及び、バーキンの哲学的ビジョンが作中で他キャラクターからの批判や嘲笑、相対化を大々的に受ける本作の作りが、ロレンス文学が示すバフチン的な対話性を強調する通説による解釈とは異なり、バーキンの特異なビジョンへの読者の無理解や批判、嘲笑の機先を制する目的で設けられたものとして理解し得ることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、一年に一つのペースでロレンスについての作品論を形にしたうえで、査読つきの学術誌に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ロレンスの他作品についてこれまでの研究の延長線上の枠組みで作品論を書く余地がないか検討したい。
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