Project/Area Number |
20K13071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
三浦 香織 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (90633628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 心理副詞の認可 / 尊敬語化 / 述語と付加詞 / 否定の焦点 / 非顕在的な移動 / 普遍的な性質とパラメーター / 極性 / 日本語・韓国語 / 動詞句 / 普遍文法・個別文法 / 否定の作用域 / 心理副詞の内部構造 / 日本語 / 韓国語 / 通言語的研究 / 意味と統語のインターフェイス / 統語構造 / 意味機能 / 動作主・経験者 / 否定のスコープ / 主観性・客観性 / 比較研究 / 日本語、韓国語、英語 / 言語の普遍性と変種 / 形容詞句の精密化 / 動詞句の精密化 / 心理副詞の形態・統語的特徴 / 日英韓の通言語的検証 |
Outline of Research at the Start |
普遍文法の解明を目指す生成文法では、これまで文の中核的な要素である動詞句の文法について多くの言語間で検証がなされ様々な理論が構築されてきた。一方、副詞的な要素の性質を意識した動詞句の理論構築は進められているものの、未だ未着手の課題も多い。本研究は日・英・韓の心理副詞(例:美味しく)を観察・検証し、その特徴が言語の普遍性と変種について語るものをつまびらかにすることを目的とする。以下の3点を重点課題とし、心理副詞の内部構造とそれが関わる動詞句の精密化を進める。 (1)心理述語の統語に関する検証 (2)心理述語を形成する接辞(化)に関する検証 (1)と(2)の検証から導かれる付加詞の認可システムの構築
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Outline of Annual Research Achievements |
R5年度は主に日本語における心理表現の認可について理論化をおこなった。第一に、心理表現が認識動詞と共起した場合と一般動詞と共起した場合では基底構造が異なることを提案した。認識動詞の場合は心理表現は小節を形成できる述語であるが、一般動詞の場合は付加詞である。後者の統語構造や意味解釈については先行研究の調査が手薄であるため、この部分を明らかにした。はじめに、心理表現は主節動詞と分離した節を構成できるのかを調査した結果、無理であることがわかった(「太郎は本を面白く読んだ」→「*太郎は面白かったが、本を読んだ」)。二次述語である描写述語はこれが可能である(「太郎は裸足で走った」→「*太郎は裸足であったが、走った」)。次に、尊敬語の接辞をもつ心理表現が主動詞の目的語や主語を叙述の対象にできるかどうかをテストした。その結果、描写述語は可能であるが(「学生は山田先生を意識不明のご状態で運んだ」)、心理表現はできなかった(「*学生は山田先生をご印象深く語った」、「*山田先生は学生をご印象深く語った」)。次に、心理表現は否定の焦点を形成できないことが明らかになった(「太郎はその食事を美味しく食べなかった」→「*太郎は食事をしてそれを美味しいと思わなかった」)。描写述語はこれが可能である(「太郎は裸足で走らなかった」→「太郎は靴や何かを履いて走った」)。次に、擬似分裂文を用いて、心理表現の基底位置は動詞句(vP)であることを明らかにした。しかし、これは問題である。心理表現は動詞句に併合しながらも否定の焦点になれないのである。この事実から、心理表現は主節の主語に「経験者」の解釈を付与するために、[Spec,TP]まで非顕在的に移動すると提案した。心理表現が常に「主語指向」的な解釈を受けるのはこの移動のためであると考える。また、心理表現が肯定極性を示すという昨年度の発見はこの部分に連関する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年のCovid-19の感染拡大で情報収集やデータ収集が思うようにいかなくなったことが、いまだに大きな要因となっているが、その後、海外渡航が可能になっても海外でのデータ収集や学会発表が思い通りに進まなかったのも事実である。特に、韓国語の二次述語や付加詞の事実について代表者の知識が欠けていることや、データ収集の方法が各言語の母語話者で異なることなどが要因である。また2022年から現在に至るまで、本務校において管理職を任されていることも遅れの要因の一つとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
先に提示した研究成果と遅れの原因を考慮し、期間延長を申請した。残された課題としては、韓国語の心理表現についてより詳細に調査を進めることである。とりわけ、韓国語の描写述語が日本語のそれと同じような統語構造や意味解釈を得られるのかを調査し、韓国語の心理表現が一般動詞と共起する際、述語なのか、付加詞なのかを見極める必要がある。その後、描写述語と心理表現の否定の焦点の形成の仕方に違いがあるのかどうかを調査し、否定のスコープについて普遍的な構造を立てることが可能なのかどうかを吟味する。これまでの調査では、一部で違いがあることがわかっている。さらに、心理表現の基底生成の位置を調査し、韓国語でも心理表現は非顕在的な移動を必要とするのかどうかを議論する。これらの研究を推進するには背景にある韓国語の文法全般を理解する必要があるため、本研究が終了した以降も継続して調査を進める予定である。
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