Project/Area Number |
20K13174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
巽 昌子 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (90829326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 武家社会 / 公家社会 / 寺院社会 / 相続 / 比較 / 処分状 / 付法状 / 継承 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は武家社会における相続に検討を加え、武士の発生や展開の背景、およびその社会の特質を追究することにある。 はじめに武家社会の相続の在り方を考察し、武士が「武家」という独自のコミュニティを形成し展開する過程を詳らかにする。続いて武家が公家や寺院といかなる関わりを有し、影響を及ぼし合ったのかについて探る。相続を軸にした武家・公家・寺院社会の特質の比較・検討を通し、武家社会の独自性を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は武家社会における相続に検討を加え、武士の発生や展開の背景、およびその社会の特質を追究することにある。はじめに武家社会の相続の在り方を考察し、武士が「武家」という独自のコミュニティを形成し展開する過程を詳らかにする。続いて武家と公家・寺院との関係性、さらには互いに及ぼし合った影響について探る。相続を軸にした武家・公家・寺院社会の特質の比較・検討を通し、武家社会の独自性を解明する。 研究四年目となる令和五年度は、武家における相続の在り方の変化について、「処分状」や「譲状」に焦点を当てることにより捉えていくという前年度の研究を踏まえつつ、鎌倉時代末から南北朝時代にかけて生じた武家社会の争いに注目し、それらが当該期の寺院社会に及ぼした影響を探究した。その際には公家社会における争いも視野に入れ、武家社会と比較することにより、武家社会の特徴を一層鮮明化することを試みた。具体的には、醍醐寺の事例を中心に寺院社会で用いられた「付法状」の役割を見直し、「処分状」と比較することによって、武家社会における相続の独自性を明らかにした。 また、今年度はお茶の水女子大学の大薮海准教授との共同研究に着手し、公家・寺院社会に加えて神社における相続の事例にも検討を加えた。大薮氏は鎌倉時代末から南北朝時代にかけての公家・武家社会の争いが伊勢神宮祭主職の相続に与えた影響に関する考察を行い、この研究と併せ考えることを通して、本研究では手薄になっていた、神社における相続の在り方へのアプローチが可能となった。これにより、武家社会と神社との関係性を探る足掛かりを得た。 当該期の武家社会と公家との関係性の考察、そして武家社会が寺院・神社の相続に与えた影響に迫ることによって、相続を軸にそれぞれの社会の比較が可能になり、武家社会の独自性の解明に向けて前進することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間一年目・二年目は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて急遽研究計画を変更し、他分野の研究者との比較研究を活かしながら、日本中世における武家社会の特質の探究に取り組んだ。三年目は武家社会の相続について、「処分状」や「譲状」に焦点を当てて考察するという当初の計画に則した研究を進めるとともに、前年度までに得られた研究成果を編著書や学会報告にて公表した。ここまでの段階で、当初の研究計画にはなかった花押やハンコの歴史に関する研究にも取り組むことになったが、結果としてこれらの研究からも、本研究の深化に資する成果を得ることができた。 今年度は、「処分状」や「譲状」を基にして武家における相続の在り方の変化を捉えるという前年度の研究を踏まえつつ、鎌倉時代末から南北朝時代にかけての武家社会の特徴の解明を試みた。当該期に生じた武家社会の争いに焦点を当て、公家社会における争いとの比較や、武家社会の争いが寺院社会に及ぼした影響に関して検討を加え、研究報告を行った。こうした当初の計画に沿った考察とともに、お茶の水女子大学の大薮海准教授の協力を得て、同時代の神社における相続の事例にも注目したことにより、当初の計画よりも検討対象を広げることが可能となった。現在は、寺院と神社の相続に対して武家が与えた影響を探り比較する研究を進めており、武家が両者といかなる関係を築いていたのかを詳らかにすることを目指している。 以上のように、新型コロナウイルス感染症の影響によって急遽立ち上げた研究と、当初の計画に則った研究の双方に取り組んでおり、さらには当初の研究には含まれなかった、武家と神社との関係性にまで視野を広げることができていることから、研究計画はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は鎌倉時代末から南北朝時代にかけての武家社会の争いに焦点を当て、公家社会における争いとの比較や、武家社会の争いが寺院社会に及ぼした影響に関して検討を加えた。具体的には、相続時に用いられる文書である「処分状」・「譲状」と「付法状」との比較・検討を基に、武家社会の特徴の解明を試みて研究報告を行った。また、同時代の神社における相続の事例にも視野を広げ、そこにみられる武家の影響についても考察を加えた。 当初の計画では今年度が研究最終年度であったが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて研究一年目・二年目に大幅な計画変更が生じたこともあり、当初計画していた、武家社会における相続の具体的な様相の解明が充分に達成できたとは言えない状況にある。加えて今年度の研究により、寺院のみならず、神社の相続にも注目し、武家社会との関係性の考察・比較を行い得る可能性が浮上した。 これらのことを踏まえ、本研究課題は次年度も継続することとした。次年度は武家と公家の「処分状」に着目しながら、それぞれの社会における相続の様相を探究する。また今年度の研究を基にして、鎌倉時代末から南北朝時代にかけての武家社会と公家社会との関係性、および武家社会が寺院・神社の相続に与えた影響に関する考察を進展させる予定である。これらの研究により、相続を軸に武家社会、公家社会、寺院社会、さらには神社をも含めたそれぞれの社会を比較し、武家社会の特徴・独自性の解明につなげていく。こうして得られた研究成果は、研究報告や論文にまとめて公表することを目指す。
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