Project/Area Number |
20K13322
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Hitotsubashi University (2021-2023) Sophia University (2020) |
Principal Investigator |
江藤 祥平 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90609124)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 憲法 / 立憲主義 / 象徴天皇制 / 平和主義 / 象徴 / 国法学 / 公法学 / 統合 |
Outline of Research at the Start |
本研究のねらいは、日本国憲法における「象徴」の意義と役割を明確にすることを通じて、立憲主義の概念と両立可能な象徴観を明らかにするところにある。昨今、日の丸・君が代の問題、前天皇の退位問題を契機として、憲法の定める象徴の意義が問い直されている。ところが、象徴の概念は、前近代的な色彩が強く、従来は法学には馴染まないものとされてきた。しかし、象徴のもつ統合作用を理解することなく、真に国民国家を語ることはできない。本研究は、このことを近代における象徴概念の消息を辿ることで明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の4年目にあたる令和5年度は、日本国憲法における象徴概念の意義について、主に日本国憲法の平和主義の意義に照らしつつ議論を展開した。以下、公表した論文の中から下記のものを取り上げて、研究成果を概観する。 ・Remnants of Pacifism in Postwar Japan 本論稿は、イタリアのPercosi constituzionali誌にて公表した論文である。そのタイトルの通り、本稿は、戦後日本において平和主義の概念がどのような変遷を遂げてきたかを、実証的に裏付けようとしたものである。戦後日本においては、平和主義が新しい日本の象徴として歓迎されたことは、従来の研究においても指摘されてきた。戦前の日本の正統性が否定される中で、戦後日本にとって平和にコミットすることは、過去を清算するという意味においても、また新しい時代を生き抜いていくという意味でも必要だった。しかし、天皇が象徴として憲法に生き残ったことは、日本の統治を円滑にする一方で、平和主義の位置付けを不透明にした。平和主義は、昭和天皇を含めた戦前日本の施政者の戦争責任を曖昧にする役割を果たしたからである。実際、戦前と戦後を生き抜いた昭和天皇は、自らの戦争責任については曖昧な態度を取らざるを得なかった。しかし、平成の天皇の時代になり、平和主義へのコミットメントは明らかになってきた。象徴天皇は、もはや責任の免罪符としてではなく、戦争の記憶を正しく次世代に受け継ごうとする平和主義の象徴としても機能してきた。ただしそのことは同時に、立憲民主制と緊張関係を生むことが明らかになった。 上記の議論が明らかにするように、日本国憲法における象徴の意義は、時代に制約されて翻弄されながらも、そのかたちが明確となってきた。それを積極的に評価するかどうかは開かれた問題であるが、現状を把握しておくことは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンデミックの影響もあり全体としてはスケジュールは少しタイトであったが、令和5年度をもって当初予定していた研究計画は概ね遂行することができた。ただ、研究を進めていく中で、さらに深掘りする必要があると思う点に直面するに至ったのも事実である。また、本研究の成果を、国内および海外で公表する機会を十分に設けることはできなかった。この点を最終年度にあたる令和6年度は実施するつもりでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる令和6年度は、これまでの研究成果を対外的に積極的に公表して、フィードバックを受ける中で、さらなるブラッシュアップに努めたいと考えている。具体的には、5月末にタイのバンコクで開催されるアジア法学会(ASLI)において研究成果を公表するほか、12月にあるアジア憲法学会においても研究実績を公表し、批判を仰ぐつもりでいる。また、余力があれば、比較法の分野における研究も進めて、諸外国における憲法が象徴概念をどのように扱っているかの研究もできればと考えている。
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