Project/Area Number |
20K13335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05030:International law-related
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
権 南希 関西大学, 政策創造学部, 教授 (90570440)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 武力紛争 / 環境損害 / 文化財 / 国際刑事裁判所 / ILC / 付随的損害 / 国際法委員会 / 国際立法 / 国際法 / 国連国際法委員会 / ジュネーヴ諸条約第一追加議定書 / 国連補償委員会 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、武力紛争をめぐる環境損害に対する国際法規範の限界を指摘するとともに、規範論と動態論の観点から適用射程を再構築し、国際法体系に内在する規範領域間の断片化を克服する。内戦や特定領域内での抗争を特徴とする現代型の武力紛争は、低烈度の場合でも深刻な環境影響をもたらすため、国際性による武力紛争の区別を排除し、非国際的武力紛争に適用できる規範の定立を確認することで規範の不均衡状態を改善する。また、国際法委員会による近年の立法過程を分析し、保護区域の設定等の予防措置、損害の救済措置等の紛争後の平和構築における争点について特定の法領域を超えた俯瞰的検討を試みることで、問題解決の可能性を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は、複数の法体系の規範が競合する場合の調整原理について理論的な検討を行っており、より具体的に適用可能な国際環境法の原則などについて検討を進めている。 これまでの研究概要については、国際法学会のエキスパートコメント「武力紛争時における環境保護」で一般公開した(No. 2023-4)。2022年12月、ILC は「武力紛争に関連する環境の保護」原則草案を採択している。これは、武力紛争に関連する環境損害の最小化を目的とした防止措置や実効的な救済措置等を通じて、武力紛争に関連する環境の保護を強化することを目的としている。原則草案は武力紛争時における環境保護に関する規範形成の状況を踏まえた法定立の発展的な形として評価することができる。特に、その最も大きな特徴は、特定の法領域を超えて包括的なアプローチを採用している点である。例えば、原則草案では非国際的武力紛争をも適用範囲に含めており、武力紛争の最中のみならず、その前後、さらに占領状態までをも対象としている。 また、ヨーロッパ憲法学会(韓国)が発行する学術誌にて、これまでの研究成果のうち、国際刑事責任の追及に関する主要な論点を抽出し、その限界を明らかにする論文を掲載している(The Implications of Cultural Property Destruction in Armed Conflict: A Critical Analysis of International Criminal Responsibility, European Constitution, vol. 43, 2023. 12, pp.109-142)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、国際人道法と国際環境法や人権法の関係性を強く意識しながら本研究課題に関する理論的枠組みについて検討を行い、その成果をまとめる作業に着手している。特に、これまでの研究を踏まえて、関連する諸分野の有機的な関係性を明確にすることができたことから、研究初期段階において設定した問いについて再検討を行い、発展的に組み替えることができた。 特に、別の研究プロジェクトとの関連で、本研究課題にも関連する内容を新たに検討する機会があったことから、今後、本研究課題の成果のとりまとめの際にはこれらの関連研究の内容を踏まえて、新たな論点を抽出し、発展的に展開させていく予定である。また、昨年度の9月からは本務校の在外研究中である状況から、集中的に成果のとりまとめを行うことができた。資料調査の状況については、当初、本研究課題において計画していた国際機関に関する研究調査地域が現在滞在中の地域と異なるため、実施日程を調整している。このような状況からおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の主な関心は、国際法が設定している法的枠組みを確認することである。さらに、国際法の諸分野において蓄積されてきた多様な規範の発展状況をこれらの枠組みの中で如何に調整することができるのかを模索することである。これまでは適用可能な規範を枠組みごとに検討しており、その限界を明らかにすることができた。今後は、国際法の価値体系の中で環境保護を軸に、如何にこれらの体系の競合状況を解釈し、調整するかという問題により着目し、課題構造を俯瞰的に捉え、研究成果をまとめていく。 特に、今年度は環境損害に対する救済の制度的発展に着目した研究を行う。環境法分野では法規範の発展と履行レベルの制度化が急速に進み、環境損害に対する対応に様々な統制の手法が取り入れられてきた。従来、武力紛争時の損害は伝統的な国家責任の枠組みを前提に違法行為に対する事後救済の一部として処理されてきたが、これは環境損害を扱う有効な手段ではない。2018 年、ICJ は国境地帯ニカラグア活動事件金銭賠償判決で「環境それ自体」に引き起こされた損害に対して金銭賠償を認める判決を出している。このような新たな動向は、武力紛争をめぐる環境損害に対して充分に機能できなかった国家責任の脆弱さを補完し、環境損害の事後救済の強化につながるものである。 今年度は研究の最終年度になるため、積極的に様々な媒体において研究成果を発表する。今年度の下半期には韓国国際人道法学会の研究大会において本研究課題に関する国際立法の状況と評価について、研究成果を報告する予定である。
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