Project/Area Number |
20K13380
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 孝紀 日本大学, 法学部, 准教授 (80847434)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 比例原則 / ドイツ民法 / 権利行使の制限 / 信義則・権利濫用 / 分配的解決 / 平等原則 / 利益衡量 / 損害賠償の制限 / 信義則 / 権利濫用 / ドイツ法 / 契約の内容形成の制限 / 過大な権利行使の制限 / 損害賠償の算定・調整 / 契約自由の制限 |
Outline of Research at the Start |
民法には、契約自由の原則を制限する諸規定が存在する。この規定の解釈は不明瞭な文言・判断基準に委ねられることからその解釈を明確にし、法的安定性を担保する判断枠組みを構築することが求められている。 こうした問題背景をふまえ、本研究は、ドイツ民法の「比例原則」の視点から契約自由の原則を制限する諸規定の判断枠組みの明確化を目指す。この目的を達成するための課題として、本研究では、ドイツ法を対象に、比例原則による契約自由の制限が正当化される根拠、契約法における比例原則の位置づけの解明に取り組み、日本法への示唆を得ることを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ法を比較の題材として、民法における比例原則の位置づけ・適用場面・機能を個別場面に即して検討するものである。 2023年度の最も大きな成果は、ドイツにおける研究・調査を行ったことである。具体的には、ドイツ契約法における比例原則に関する第一人者であるコンスタンツ大学のMichael Stuerner教授へのインタビューを実施した。インタビューでは、私法・民法領域における比例原則の位置づけ、私的自治の原則との関係性、比例原則に関する最近の動向などについて有益なコメントを伺うことができた。またドイツでの研究調査では、ヨハネス・グーテンベルク(マインツ)大学やブツェリウス・ロースクールを訪れ、各大学の教授らと研究に関する意見交換を図ることができた。 またStuerner教授から推薦された書籍を手がかりに、文献精読を進めた結果、ヨーロッパ契約法における比例原則の新たな機能を見出すことができた。具体的には、欧州司法裁判所の判例では、一方当事者の権利行使を認めつつ、当該権利行使が他方当事者にもたらす不利益を考慮して、一方当事者に負担を課したり、その権利行使を縮減する解決が採られている。学説では、そうした分配的解決を採用する際に比例原則が機能しているとの見解がある。こうしたヨーロッパ法の動向及び日本法への示唆に関して中央大学などの研究会において研究報告を行い、学外の研究者より有益な指摘・意見を得ることができた。 このほか、比例原則の位置づけや機能と関わる問題として、債権者の権利行使の限界事由の判断において債務者の帰責事由がどのような影響を及ぼすのかについても研究を進めた。その中間報告として、取引法研究会において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度以降、コロナ禍において授業準備に必要以上に時間を要したり、国内外の出張が制約されたといった事情から、特に2022年度までは当初想定した研究活動を十分に行うことができなかった。また、比例原則の基礎理論に関する研究について文献精読に取り組んでいたが、予想以上に時間を要した。こうしたことから想定よりも研究活動が遅れている状況にあった。 もっとも、その間も民法領域において比例原則が用いられる個別場面を対象として、同原則が果たす機能に関して研究を行ってきた。その成果については研究会での報告に加えて、2021年・2022年度と継続して論文を公表することができた。また2023年度はドイツでのインタビュー調査を行った。その結果、上記の<研究実績の概要>に示す通り、比例原則に関する新たなテーマに取り組み、研究会でその成果を報告し、一定程度研究を進展させることができた。 以上のことより、2023年度は前年度までの研究の遅れを取り戻すことができたものの、全体としてはやや遅れているとの評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、民法において、当事者の権利が認められるか、全く認められないかというオール・オア・ナッシングの解決策ではなく、当事者間でリスクを分配する解決(分配的解決)を採用する際に、比例原則がどのような機能を果たすのかについて研究を行う。この研究成果については、本年5月又は8月に学内の紀要へ投稿できるように研究を進展させる。 第2に、2023年度の研究(ドイツでのインタビュー調査)からは、契約自由と平等との調整原理として比例原則が用いられていることが分かった。この点に関して書かれたMichael Gruenberger教授の著書などの文献を精読し、同場面における比例原則の機能について探求する。この研究が計画通りに遂行した場合は、2024年6月のドイツ民法研究会にて報告する予定である。
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