Project/Area Number |
20K13448
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 07010:Economic theory-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅野 康司 東北大学, 経済学研究科, 講師 (30868047)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 金融仲介機関 / 金融危機 |
Outline of Research at the Start |
世界金融危機の経験から、金融仲介機関が持っていたインセンティブが歪むことで、金融システムは機能不全に陥り、実体経済にも悪影響を及ぼしてしまうことが明らかになった。これを踏まえ、本研究では、情報の非対称性から生じる金融仲介機関のガバナンス問題に焦点を当て、その金融システムの安定性に対する影響や金融規制監督の実効性を分析することを目的とする。本研究は、インセンティブ設計というミクロ的アプローチと経済全体の変動を分析するマクロ的アプローチを組み合わせることで、個々の金融仲介機関への規制とマクロ経済の安定化のための政策的措置が生み出す複合的な効果を解析することが可能になる、という重要な意義を持つ。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金融仲介機関のガバナンスが金融危機に与える影響を分析するための理論モデルを構築し、金融システムの安定化に寄与する政策的含意を導くことを目指している。
今年度は、金融仲介機関の流動性マネジメントに注目し、金融危機発生前と危機の最中の現金保有インセンティブの違いを理論モデルに基づいて明らかにした。このモデルでは、金融仲介機関は流動性ショックに直面した際には、保有していた現金を活用するか、質に関して不透明な資産を投資家に対して売却すると想定している。ここで、投資家は自身の情報収集能力を使って質の悪い資産を見つけることができるが、その資産を保有していた銀行は売却することができなくなってしまう。そこで、銀行は投資家による情報収集を未然に防ぐため、価格を大幅に引き下げて売却しようし、市場が非流動的になるのである。この状況下では、流動性ショックが生じる可能性が低いときには、銀行の保有現金は危機を乗り切るには不十分であり、流動性規制が必要となることを示した。一方で、流動性ショックが生じる可能性が高いときには、現金を過剰に保有しようとするため、流動性規制は逆効果となってしまう、という結果も明らかになった。また、事前規制ではなく事後的に政府が市場に介入し価格を買い支えるような政策を実行するとき、流動性ショックが生じる可能性が低い場合には銀行の現金保有を促進させ、流動性ショックが生じる可能性が高い場合には銀行の現金保有のインセンティブを低下させることで、経済厚生の改善につながることを示した。この研究成果は、” Liquidity Policies with Opacity”と題したワーキングペーパー(MPRA Paper No. 119531)にまとめられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
金融仲介機関の流動性マネジメントに焦点を当て、金融仲介機関が流動資産を保有するインセンティブや金融市場での価格決定を取り入れたモデルを構築することができた。また、世界期金融危機後に導入された流動性規制などの新しい政策について、基礎モデルに基づいて分析したことで、政策的に重要な新しい知見を得ることができた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、研究成果を国際学会などで報告する機会を逃してしまったため、研究はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、国際学会などに積極的に参加し、研究者や政策担当者から幅広く意見交換を行い、そこでのフィードバックを論文に反映させることで、研究成果の質をさらに高めていく予定である。特に、経済厚生や金融危機防止のための金融規制監督についての議論を深め、研究成果を具体的な政策提言に結びつけることを目指す。その上で、より多くの論文を作成し、海外の学術雑誌に投稿していく予定である。
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