企業による品質決定を考慮した場合のパススルーおよび帰着についての実証分析
Project/Area Number |
20K13472
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 07040:Economic policy-related
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
土居 直史 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30633945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | パススルー / 内生的品質 / 帰着 / 離散選択モデル / 品質 / 航空産業 |
Outline of Research at the Start |
費用や税が価格にどのように上乗せされ(「パススルー」)、その負担を生産者と消費者でどのように分け合うか(「帰着」)の理解は、生産に関わる規制や政策全般について、その影響を予測するために重要である。
本研究では「企業による品質決定を考慮した場合、パススルーや帰着は市場の特徴(競争の度合いや需要関数の形状など)とどのような関係を持つか」という問いについて、航空旅客産業における燃油価格の変動の影響に注目した実証分析をおこなう。燃油価格が変動したときに、運賃やサービスの質がどのように変化し、旅客と航空会社がどのように負担を分け合っているかを明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、昨年度から引き続き、実証分析の土台となる理論的枠組みの検討に取り組んだ。
税・費用の価格への転嫁(パススルー)や帰着については、非常に多くの研究蓄積がある。しかし、既存研究においては、基本的に品質などの製品特徴は外生とされ、企業は価格だけを決める状況を想定した分析がなされている。そのため、品質内生の場合のパススルーや帰着については理論的にも分かっていないことが多い。そのため、本研究課題で試みる品質内生の場合のパススルーや帰着に関する実証分析に先立ち、その基礎となる理論的枠組みを確立することを試みた。そのような理論的枠組みは、実証分析に用いる変数選択や推定結果の解釈のために役立つと考えられる。
2022年度には、昨年度考えていた理論モデルをより一般的に拡張したうえで、品質内生時の税・費用による価格・品質への影響に関する理論分析をおこなった。そこでの結果のひとつとして、品質内生の場合、税・費用が増えたときに価格が下がることがあるということが明らかになった。既存研究における品質外生の設定では、通常、税・費用増により価格は上がる。しかし、品質内生の場合、税・費用増による品質低下が、価格を下げるように働く可能性がある。そのような働きが十分強くなるような状況では、税・費用増によって価格が上がらず、むしろ下がるということも起こりうることが分かった。また、別の結果として、状況によっては税・費用増でむしろ品質が上がりうることも示された。これらの結果をまとめた論文をワーキングペーパーとして公開し、英文査読誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、2022年度までに航空旅客市場の需要・供給の構造モデルの推定に基づく分析を終える予定であった。しかし、実際にはそれを終えることができなかったため「遅れている」を選択した。
研究計画を予定通り終えることができなかった理由は、研究を進める中で、当初予定していなかったふたつの方向への研究アイデアが浮かび、まずはそれらを形にすることを優先したためである。いずれの研究も本研究課題の実証分析をおこなう上で役立つものと位置づけられる。
具体的には、1)需要推定方法の確立と2)理論的枠組みの拡張である。まず、旅客需要モデル推定方法を検討しているなかで、既存の手法を改善できることに思い至った。そのため、2020年度から2021年度にかけてはその確立と結果の公表を優先した。また、実証分析に用いる変数などについて検討するために既存の理論研究を確認していくなかで、理論的枠組みを拡張する方法に思い至った。そのため、2021年度から2022年度にかけてはその拡張と結果の公表に取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは2022年度に拡張した理論的枠組みでの理論分析から得られた結果を公表する。成果の学会発表や論文公表を目指す。
そのうえで、研究実施計画に沿う形でデータ分析をおこなう。初めに比較的単純な統計モデルによって、費用(燃油価格)による価格(運賃)や品質(1日あたりのフライト数)への影響を分析する。その際には、拡張した理論的枠組みを基にしてモデルに含める説明変数の取捨選択や推定結果の解釈をおこなう。
その後、需要と供給の構造モデルの推定をおこない、それを用いて燃油価格の帰着の分析を試みる。その際には、2020-2021年度に考案した需要モデルの推定方法の活用を予定している。
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Report
(3 results)
Research Products
(11 results)