貸出拡大に起因する住宅価格のブームとバストのサイクルに関する研究
Project/Area Number |
20K13532
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 07060:Money and finance-related
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
戸部 智 関西学院大学, 総合政策学部, 講師 (00824145)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 信用供給量 / 住宅市場 / 住宅価格サイクル / 資産バブル |
Outline of Research at the Start |
本研究は住宅価格に対する家計向け貸出の短期から中期的な影響を検証する.従来の研究では,(1)貸出拡大が住宅価格ブームを引き起こすというポジティブな効果と,(2)貸出拡大が後々の住宅価格ブームの崩壊を伴う金融危機や不況に帰着するというネガティブな効果が別々の系統の研究で検証されてきた.それに対して,本研究はローカル・プロジェクション手法を用いて家計向け貸出の拡大が短期的には住宅価格の上昇を引き起こすが,将来的には住宅価格の下落を予測することを統一的に示す.これを通して,本研究は幅広い国と時代で観察されてきた住宅市場のブームとバストの一般的なパターンをシンプルに可視化できる点に貢献が期待できる.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①分析のアップデート、②主論文となるワーキングペーパーの修正、③副次的に得られた研究結果の取りまとめを行った。 ①について:分析はローカル・プロジェクションと操作変数法を組み合わせたLP-IV手法に論文を通じて統一し、分析手法の一貫性を確保した。操作変数については以下の考え方に基づいている。各国の貸出は世界的な貯蓄過剰や金利低下といったグローバルな共通ショックに影響される。しかし、共通ショックに対する感応度は各国で異なることが自然である。これを踏まえて、グローバルな共通ショックと各国個別の感応度の交差項を貸出の操作変数として利用した。グローバルな共通ショックと各国個別の感応度の代理変数として利用した指標は期待通りの特徴を示している。共通ショックとして利用した変数は長期金利の世界平均との間に負の相関関係が認められ、貸出供給ショックに強く影響を受けていると推測される。また、各国個別の感応度として利用した変数は、貸出ブームが発生した時期の貸出の伸びをよく説明することを確認している。以上の事実から、交差項を利用する設定は貸出の供給ショックを識別する上で大きな助けとなっていることが推測される。 LP-IV手法で住宅価格のインパルス応答関数を推定すると、貸出増加は短期的には住宅価格の上昇を引き起こすものの、中長期的には住宅価格の下落をもたらすことが確認できた。同様に、長短金利スプレッドのインパルス応答を推定すると、貸出増加は短期的なスプレッドの縮小を引き起こすことを確認できた。スプレッドの代わりに長期金利のインパルス応答を推定しても同金利の短期的な低下が認められた。これは分析が貸出供給ショックを識別している証左である。 ②について: 上記の分析結果をワーキングペーパーに反映した。 ③について:副次的に得られた分析結果を整理したショートペーパーを作成した。すでに投稿を済ませている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の報告書では、(1)中期的な住宅価格下落の原因を調査すること、(2)副次的論文の取りまとめを行うこと、(3)セミナー発表等でのフィードバックを受けて主論文であるワーキングペーパーをアップデートすることを推進方策としていた。(2)に関しては概ね達成されており、学術雑誌への投稿と改訂を行う段階に入っている。(3)に関しては複数のセミナーで発表し、有益なフィードバックを得られたことが大きな助けとなった。研究実績の概要でも触れた解釈面での進展には、セミナーの参加者からのフィードバックに着想を得たことが大いに役立っている。主論文の質が一段階向上したと確信している。その一方で、(1)に関しては様々な方策を試してみたものの、現時点で主論文が採用している手法やデータを利用して検証することには限界があることも認識できた。この点に関しては傍証や先行研究の結果に依拠するよりない可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3点の達成を目指す。(1)学会発表でのフィードバックを受けての主論文の最終アップデート、(2)主論文の投稿、(3)副次的な結果を整理した論文の再投稿、(4)発展的研究の予備分析に着手。研究計画の最終年度でもあり、(1)と(2)は特に重要な方策である。また、主な分析や主論文の修正はほぼ終了していることを考えれば、(3)も着実に進めておきたい。具体的には貸出拡大がGDP成長率や失業率といった変数にどのような影響を与えているかを調査することが将来的な課題である。本研究の分析では、貸出供給ショックを捉えていると予想されることは大きな貢献である。過去の実証分析では国別のマクロデータを用いて供給ショック(あるいは需要ショック)を識別した例は稀であるからである。主論文で採用した分析設定の汎用性や、結果の頑健性をチェックする意味でも住宅価格以外の変数に対する影響は検証に値すると考えている。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)