Project/Area Number |
20K13701
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | JICA Ogata Sadako Research Institute for Peace and Development |
Principal Investigator |
長村 裕佳子 独立行政法人国際協力機構(緒方貞子平和開発研究所), 緒方貞子平和開発研究所, 研究員 (70868009)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | ラテンアメリカ日系留学生 / 太平洋戦争 / 日本留学 / 戦争経験 / 越境教育 / 記憶 / アイデンティティ / 留学体験 / 太平洋戦争経験 / 国際秩序 |
Outline of Research at the Start |
太平洋戦争時、日本へ留学していたラテンアメリカの日系二世は日本に取り残され、戦中に日本への戦争協力、戦後は連合国軍への協力を強いられた。同時にどちらの側からも敵国市民として見られ、日本へも連合国へも完全には帰属できない政治的立場に置かれた。このような日系人の単一国家への帰属を示すことのできない経験は日本、母国の双方の「公的」な歴史から追いやられてきた。本研究は、これまであまり見られてこなかったラテンアメリカ日系人の太平洋戦争への関わりを明らかにし、戦後、それが語られてこなかったことの意味を考察する。ライフストーリーを基にかれらの戦争経験を戦後の国際秩序とラテンアメリカ社会の文脈から捉え直す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、太平洋戦争中に滞日し、日本と連合国との間で政治的立場を問われたラテンアメリカ日系留学生の戦中の経験、戦後の母国へ帰国後の経験を分析する。その上で、戦後の南北アメリカの日系人の戦争経験の語り・記述の多様性、記憶・継承の構造を再検討する。 戦前の日本への北米出身日系留学生や東アジア出身留学生について、越境教育の視点から多くの研究蓄積があるものの、ラテンアメリカからの日系留学生についてはほとんど取り上げられてこなかった。個々のライフヒストリーを手がかりにラテンアメリカからの日系留学生の経験を分析していくことで、戦前・戦中期の日本・日本帝国勢力圏・南北アメリカ間の学生の移動/非移動と越境教育の結末、かれらの戦後社会への関わり方をより包括的に理解することができる。 本年度の調査では、ブラジルとペルーの邦字新聞記事をもとに1930年代のブラジル、ペルー日系社会における日系子弟教育の議論、子弟の日本留学を推奨する言説の分析を継続した。南米のホスト社会での排日運動の高まりへの懸念と子弟教育の必要性、日本留学への期待の議論の関連性を北米の日系コミュニティにみられた架け橋論と見比べながら考察した。 また、同時代の南北アメリカの日系留学生の戦後のストーリーを比較の視点で議論するための枠組みの検討に向けて、日本留学し、米国へ帰国した帰米二世と呼ばれた集団の存在に着目し、先行研究を整理した。先行研究では帰米二世が戦後のハワイ社会や日系コミュニティの活動に多大な役割を果たしてきたことが指摘される。 次年度はこれまでに収集してきたブラジル日系学生らの日記や手記の分析を深め、戦時期の留学体験がかれらの戦後南米社会での歩みに具体的にどのように関わっていったのかをまとめる。さらに、帰米二世の経験と照らし合わせながら南北アメリカの日系留学生の戦後の経験をグローバルな視点で明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに邦字新聞デジタルコレクションやブラジル日系留学生の日記、手記などの一次史料を収集し、分析やまとめ作業を進めてきたが、一方で、北米日系留学生と比較すべき具体的な事例の選定や分析枠組みの構築に時間を要した。比較対象の事例や分析枠組みが定まってきたため、改めて資料を分析し直し、執筆に向けた準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
比較対象の事例や分析枠組みを定めつつ、今後改めて資料を分析し直し、執筆作業に取り組む。これまでに収集してきた邦字新聞資料や日記、手記などの一次史料の分析を深め、具体的にブラジル日系留学生のライフヒストリーを再構築し、同時代の北米日系留学生の就学体験や戦後経験の事例と比較させながら記述を進める。2024年度に研究会での報告と学術誌への論文投稿を予定する。 南米の日系社会での戦前の教育思想や、戦後の日系留学生の社会上昇過程を整理するためブラジルやアルゼンチンでの追加調査、また日本国内での資料館での補足調査の資料収集を平行して行う。そこでは、すでに先行研究のある北米日系留学生とは異なり、資料の少ない南米の日系留学生の実態や彼らを取り巻いた戦前・戦後の日本・ホスト社会・日系社会の環境に関する、できる限りの史資料を収集する。また、第二次世界大戦終結後のラテンアメリカの母国への帰国プロセスについて確認すべく、外交史料館や日系留学生が滞在した地域の公文書館等での資料収集を行う。 上述の作業を進めることにより、最終的に日本・日本帝国勢力圏・南北アメリカ間の学生の移動の仕組みと戦後、南北アメリカの異なる母国へと帰国して行った日系留学生の戦後経験の差異を体系的に明らかにし、かれらの戦後社会での活動と記憶・継承の営みを検討することを目指す。
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