Project/Area Number |
20K13812
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University (2023) Shitennoji University Junior College (2020-2022) |
Principal Investigator |
谷 明日香 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (30413446)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 衣生活 / 安全・快適 / 災害 / 被服衛生学 / 災害時 / 避難時 |
Outline of Research at the Start |
災害は、時期や時間を選ばない。冬季における災害は、全域停電に伴い寒さとの戦いであり、殊に津波や豪雨などにより体が濡れていた場合は生命の危機につながりかねない。しかし、備蓄物資に衣に関連する項目はなく、被災者は避難所の毛布や個人の防災グッズの中からアルミエマージェンシーシートなどを取り出し、寒さをしのぐことになる。 本研究では、着の身着のまま避難した被災者が、避難所の備蓄物資で実践可能な防寒対策を考えた時を想定し、その保温力や衣服内温湿度などを物理実験から検証する。さらに、実際にヒトが着用した時の温熱的着用性能を着用実験により明らかにし、被服衛生学的に安全・快適な衣環境の提唱をめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
死傷者を伴う大地震は約5年に一度の割合で発生しているが、なぜかその多くは10℃を下回る2,3,4月に起こっている。さらに、風速が1m強まるごとに体感温度が約1℃下がり、条件によっては夏でも低体温症を発症する。このことから、季節を問わず、災害時の衣服の備えとして防寒対策は必須であるといえる。そこで、本研究は、着のみ着のまま避難してきた被災者が、避難所の備蓄物資(衣服以外)で実施可能な防寒対策を講じた際の保温力や着用時の衣服内温湿度を明らかにすることを目的としている。 1.試料の選定 備蓄物資や防災グッズの中から防寒対策に役立ちそうな素材として、試料6種(新聞紙、緩衝材、毛布、ブルーシート、アルミシート、高密度不織布)を選定し、それらの素材特性を比較する。 2.着衣の上から各種試料を重ね着した時の保温率と衣服内温湿度の測定 衣服内を温熱的に快適な状態にするためには、人体ー衣服ー環境系における熱・水分移動が円滑であることが重要である。そこで、熱物性測定装置サーモラボⅡを用い、水蒸気移動を伴う不感蒸散シミュレーションを実施する。なお、災害時には津波や豪雨などにより衣服が濡れている場合も想定される。そのため、実験は下着(乾燥時・湿潤時)の上から資料を重ねた時の本率や衣服内温湿度を測定する。 3.高い評価が確認された試料を用いて簡易型衣服を試作・着用実験の実施 上記2の実験からある程度の薄さと透湿性・保温性を兼ね備えた試料を選定し、その試料を用いて簡易型防寒衣服を試作する。その際、インナーとなる素材(綿・毛・機能性素材)との組み合わせによる保温力や衣服内温湿度の相違を着用実験により明らかにする。 以上より、災害時及び避難時に命をまもる簡易型防寒衣服の提案と着用時の熱物性測定を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、備蓄物資や防災グッズの中から防寒対策として役立ちそうな素材6種(新聞紙、緩衝材、毛布、ブルーシート、アルミシート、高密度不織布)を選定し、それらの素材特性(熱伝導率、保温率、通気抵抗、透湿性)を明らかにした。 令和3年度は、上記6種の試料を用いて、熱物性測定装置サーモラボⅡによる着装シミュレーション実験を実施した。具体的には、模擬皮膚の上に下着を想定した綿ニットや羊毛ニット、機能性インナーを重ね、その上に6種の試料をそれぞれ重ねた場合の保温率や衣服内温湿度を測定した。さらに災害時は、津波や豪雨により着衣が濡れている可能性が考えられるため、下着が乾燥時と湿潤時における保温率や衣服内温湿度の違いを比較した。その結果、6種の試料のうち、不透湿素材(緩衝材、ブルーシート、アルミシート)は、保温率が高くても、衣服内湿度が非序に高くなることが明らかとなった。このことは、着用者に蒸れによる不快感を感じさせ、衣服内に結露が生じることを意味する。この結露は、環境によっては外気温の低下とともに凍り、低体温症を引き起こす可能性が示唆された。 令和4年度は、着装シミュレーション実験の結果、6種の試料のうち、薄くて保温率や透湿性を兼ね備えた高密度不織布を用いた衣服を試作した。 令和5年度にはインナーの上から高密度不織布による衣服(以下、簡易型防寒衣服)を着用した時の保温力と衣服内温湿度をサーマルマネキンにより実施した。 今後は、最終年度として、これまでの研究の成果を整理しながら、災害時・避難所時に有効な防寒対策を理論的・実証的裏付けに基づいてまとめていく予定であるが、追加実験が必要な部分もあり、やや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
長引く新型コロナウィルスによる影響で被験者実験が困難であったため、予定を変更し、サーマルマネキンを用いた着用実験を行った。令和6年度の研究の進め方として、令和5年度から実施しているサーマルマネキンによる試作簡易型防寒衣服の保温力や衣服内温湿度の実験を継続していく計画である。研究成果については、着装シミュレーション実験による検証結果とサーマルマネキンによる着用実験データを含めた内容を日本家政学会等で発表するとともに、論文投稿に向けて執筆を進めていく予定である。
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