Project/Area Number |
20K14137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 10010:Social psychology-related
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
小野田 竜一 大東文化大学, 社会学部, 講師 (40791546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 協力 / 代理報復 / サンクション / 報復罰 / 集団間紛争 / 罰の評価 |
Outline of Research at the Start |
集団の協力問題は社会的ジレンマ(Social Dilemma:SD)と呼ばれ、解決法として罰制度の導入が提案されている。非協力者への罰行動は、非協力行動を抑制し、SDを解決に導く。しかし、集団内のSDの非協力者に対して、外集団の個人による罰行動が生じたときには、被罰者と同集団の個人が、罰行使者や罰行使者と同集団の個人に報復行動(代理報復行動)をとることが予測される。代理報復行動が生じると、報復された加罰者の集団においても同様の現象が起き、無関係の個人が次々と報復行動を受けるはずである。本研究では、罰行動が代理報復行動を引き起こし、集団間の報復行動の連鎖のきっかけになることを特定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度に実施された実験で、外集団の個人による罰行動が生じたときに、参加者が代理報復行動を取ることを特定した。しかし、本研究プロジェクトで想定される罰、つまり外集団の個人による罰行動は先行研究と比較すると特殊である。この罰で被罰者が協力行動へと転じたとしても、被罰者の集団の利益が上がるだけであり、罰行使者は自分の利益は元より自分の所属集団全体の利益でさえ上がらないのにも関わらず罰していることになる。この観点に立つと、本研究プロジェクトで想定された罰行動はただの攻撃行動に近いと言える。 この指摘は、参加者は主観的には攻撃行動に対して代理的な報復行動をとっていた可能性があることを示している。もしそうであるならば、向社会的な罰行動から代理的な報復行動が生じたと断ずることができない。 そこで、2023年度に実施された実験では、外集団成員による罰行動、内集団成員による罰行動、外集団成員による攻撃行動のそれぞれの主観的評価を測り、比較することで、外集団成員による罰行動が攻撃行動に近いと評価されるのか、向社会的な罰行動に近いと評価されるのかを検討した。 その結果、外集団成員による罰行動は、攻撃的行動よりも向社会的で悪意がなく、内集団成員による罰行動に近いと評価されたことが示された。また、その他の項目の結果からも、外集団成員による罰行動は、内集団成員による罰行動に比較的近い印象を持たれることが分かった。すなわち、外集団成員による罰行動は向社会的な罰行動に近いと人々に判断されることが分かり、本研究プロジェクトで発見された代理的な報復行動は向社会的な罰行動に対する反応であることが確認された。それにより、向社会的な罰行動から代理的な報復行動が生じるという罰の新たな負の側面が発見されたという本研究プロジェクトの知見をより明確化できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度では、まず、実験実施準備、所属機関における実験室や実験参加者のリクルートシステム、実験実施体制等の環境を整備した。 具体的には、Visual Studio 2019による実験用プログラムの開発を行い、通信用のネットワークの整備などを行った。その後、2021年度に購入した、同意書入れなどの実験用具、個人情報の流布を防ぐための衝立、マウスや電源タップなどのPC周辺機器、実験費を保護するための金庫などに加え、実験者IDを記載するカードやアルコール消毒液などを新たに購入し、実験室を整備・構築した。その後、所属機関の倫理審査委員会への許諾を得たうえで実験を実施した。 実験では、合計外集団成員による罰行動、内集団成員による罰行動、外集団成員による攻撃行動のそれぞれの主観的評価を測り、比較した。実験の参加者は130人を超しており、大規模な実験となった。新型コロナウイルスの影響が少なからずあったにも関わらず、研究計画における実証実験を実施でき、大きな研究成果を得た。 また、国内での様々な学会において研究成果を発表できている。そのため、「おおむねに順調に進展している」としている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、これまでの実証実験に比べ、コンピュータシミュレーションを行う予定である。このシミュレーションの目的は以下の2点に集約される。1点目は、代理報復を行うことが、その行使者に利益を与えるのかどうかを調べることである。代理報復の行使者に利益が生じなければ、代理報復を人々がとる合理的な理由がなくなってしまう。代理報復の行使者に自己利益が生じる条件を特定することで、代理報復を人々が行う機序を明らかにする。2点目は、代理報復によりSDの協力傾向がどのように変化するのかを特定することである。代理報復は罰行使者の利益を下げる行動であるため、罰行使が抑止されてしまう。罰行使が抑止されれば、非協力者の利益が高くなり、SDに非協力者が増えることとなる。すなわち、代理報復を取る個人によって、SDの解決が妨げられる可能性があり、その検証をする必要がある。 当該コンピュータシミュレーション研究を実施するにあたり、そのためのコンピュータが必要になる。 また、本研究プロジェクトの成果を国内外の学会で発表すると共に、成果をまとめた学術論文を国際誌に投稿する。その際に、出張費や英語の校閲費、論文の投稿費などが必要になるだろう。
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