Project/Area Number |
20K14383
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 大也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90802976)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 冷却原子気体 / 開放量子系 / フィードバック制御 / トポロジカル相 / 超流動 / 冷却分子 / 量子測定 / 強相関系 / 可積分系 / デコヒーレンス / 量子臨界現象 / エルゴード性 |
Outline of Research at the Start |
量子系における外部環境との結合による散逸の効果は古くからの重要な問題である。特に、近年の冷却原子気体をはじめとした量子シミュレータの発展は、粒子間に強い相関のある多体系に対する散逸の効果を調べる理想的な舞台を提供している。本研究では、Bethe仮設法などの強相関効果を記述する強力な手法を散逸の存在する開放系へと拡張することにより、冷却原子気体で実現する開放量子多体系を記述する理論を構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、冷却原子気体において実験的に実現される開放量子多体系を記述する理論を発展させることを目的としている。2023年度に得られた主な成果は以下の通りである。 (1)量子フィードバック制御を記述する量子チャンネルにトポロジーによる特徴づけを導入することによって、フィードバック制御で実現される非平衡トポロジカル相の新たなクラスを見出した。量子フィードバック制御の対称性に基づいた分類を与え、具体例としてフィードバック制御によってカイラル・ヘリカルな量子輸送を示すトポロジカルMaxwellデーモンの模型を構築した。これらのトポロジカルフィードバック制御は、近年原子物理分野において発展の著しい量子気体顕微鏡や光ピンセットアレイといった単一原子・単一格子点レベルの量子測定・量子制御技術によって実現が可能であると期待される。 (2)2体ロスによる散逸下のBose-Einstein凝縮体に対する超流動応答理論を構築した。特に、ごく最近報告された冷却極性分子のBose-Einstein凝縮の初の実験的観測を念頭に置き、双極子相互作用をもつ分子のBose-Einstein凝縮体への適用を議論した。冷却分子系は大きな長距離相互作用をもつ系の量子シミュレーションの舞台として期待されてきたが、化学反応による分子のロスがこれまで大きな課題となってきた。本研究結果はそのような散逸下のBose-Einstein凝縮体の超流動を記述する基礎理論を与えることが期待される。 (3)開放量子系の基礎方程式である量子マスター方程式の多体系に対する導出をLieb-Robinson限界を用いて与えた。特に、Lieb-Robinson限界を用いることにより散逸の局所性を反映した量子マスター方程式が系統的に導出できることを見出し、その適用範囲を議論した。さらに、1次元フェルミオン鎖を用いてその有効性を確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、開放量子系の研究を新たな方向へと展開し、量子フィードバック制御によって実現されるトポロジカル相の研究を行った。その結果、上記(1)で述べたように非平衡トポロジカル相の新たなクラスを見出し、その一般的な枠組みを構築することに成功した。これは当初計画には含まれていなかった発見であり、今後、冷却原子やRydberg原子の精密量子測定・量子制御技術と組み合わせることによる実験的実現が期待される。また、当初計画に沿った開放量子多体系の研究についても、本年度は(2)で述べたように散逸下の超流動の基礎理論の構築に取り組んだ。特に、研究過程で冷却極性分子のBose-Einstein凝縮の初の実験的実現が報告されたことはこの研究に対する動機を大きく加速させた。また、(3)で述べた開放量子多体系の量子マスター方程式の導出についての結果も意義深い成果である。この結果により、今後冷却原子気体に留まらず様々な開放量子多体系をミクロな基礎付けのもとに議論できる下地が整った。以上により、当初計画に沿った研究・当初計画には含まれなかった研究のいずれについても大きな成果が得られたと結論付けられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに得られた成果をさらに発展させ、開放量子多体系の研究の深化を目指す。特に、量子フィードバック制御を用いたトポロジカル相の研究は新しいトピックであるため、様々な方向への発展が期待される。冷却原子気体との関連では、多体系への拡張も大いに興味深いため、多体系のフィードバック制御も積極的に検討する。また、開放系の超流動理論も引き続き展開する。特に、冷却分子気体の実験的進展も考慮に入れ、散逸下の超流動体に特有な性質の実験的実現を探る。さらに、本年度に得られた多体系の量子マスター方程式の導出を足掛かりに、輸送現象を始めとした開放量子多体系の非平衡現象の系統的研究を展開する。
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