高圧下その場蛍光XAFS-XRD複合測定によるマグマ中のXeの化学状態の解明
Project/Area Number |
20K14584
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
若林 大佑 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (20759964)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 分子動力学計算 / 機械学習ポテンシャル / 能動学習 / シリカメルト / ネットワーク構造 / X線顕微鏡 / サブミクロンビーム / XAFS / 湾曲結晶 / 永久高密度化 / ズーミングX線顕微鏡 / フレネルゾーンプレート / 蛍光XAFS / 相転移カイネティクス / X線小角散乱 / STXM / マグマ / X線吸収微細構造分光 / 高圧 |
Outline of Research at the Start |
マグマ中に微量に含まれるXeの局所構造(価数・配位構造)とホストであるケイ酸塩メルトの構造の両方の情報を得るために、大型プレスと放射光X線を組み合わせた高圧下その場蛍光X線吸収微細構造-X線回折複合測定システムを立ち上げる。主要な組成のケイ酸塩メルトおよびガラス中のXeについて適用し、多粒子系の分子動力学シミュレーションからの情報(液相の微視的な構造やXeの安定サイト)と併せることで、Xeの化学状態の圧力依存性を物質科学的に整理する。これらの知見に基づいて、初期地球においてXeが地球深部に固定される化学プロセスを考察し、"missing Xe"の謎の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マグマ中に微量に含まれるXeの高圧下における振る舞いを調べることで、初期地球においてXeが地球深部に固定される化学プロセスを明らかにすることを目的としている。Xeガスの入手が困難な状況が継続していることを受けて、元々予定していた高圧下その場実験から理論計算によるアプローチに切り替えた。 高圧下におけるマグマ中のXeの状態のシミュレーションを行うために、多粒子系の分子動力学計算法の開発を進めた。第一原理計算の結果に基づく機械学習ポテンシャルを用いた大規模計算は、ケイ酸塩のような共有結合性の高いメルトで、かつ原子間が近づきやすい高圧条件では、容易に発散して継続できなくなる。ポテンシャルの平均化と能動学習を組み合わせることでこの問題を解決し、60GPaにおいて約3万原子系のシリカメルトのシミュレーションに成功した。室温まで冷却したシリカガラスのシミュレーション結果を解析したところ、第一原理計算の結果よりも中距離構造を高精度に再現しており、先行研究の実験結果とも整合的であることが明らかになった。また、Xeを微量に含むシリカメルトの系のシミュレーションを10GPaまでの圧力領域で実施した。その結果、SiO4四面体が構成するネットワークのボイド間を移動していたXeが、3-6 GPa程度を境に、特定のボイドに閉じ込められることが明らかになった。一方で、期待されたXeとSiやOとの間の強い結合は認められなかった。 中距離ネットワーク構造の圧力変化はXeの状態に大きく影響を与える。シリカガラスのネットワーク構造の変化(永久高密度化)に伴って現れる不均質の観察のために、前年度に開発したX線顕微鏡を発展させて、サブミクロンビームを用いたX線回折と組み合わせた観察ができるように整備した。顕微鏡を利用することで簡便にビーム調整と測定位置合わせが可能であり、特長を論文にまとめて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けてXeガスの入手が絶望的になったことを受けて高圧下その場実験を諦めざるを得なかった半面、併せて進めてきた理論計算手法の開発が実を結び、モデル物質であるシリカメルト中のXeの振る舞いについて結果が得られ始めた。計算手法の開発内容については、既に論文としてまとめて投稿済みである。また、前年度に開発したX線顕微鏡をさらに発展させる開発に成功し、論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論計算によってシリカメルト中のXeの状態に関する情報が得られ始めたことを受けて、引き続き条件を変えてシミュレーションを継続する。特に、10GPa以上の高圧領域や原子数を増やした系での振る舞いについて明らかにする。また、MgOなどの他の成分が入った多成分系のメルトに拡張し、本研究が目標とするマグマ中のXeの高圧下における振る舞いについて考察を進める。既に物性研究所のスーパーコンピュータの共同利用課題が採択されており、計算のための準備は整っている。また、前年度開発したX線顕微鏡がサブミクロンビームX線回折と組み合わせられるようになったことを受けて、このシステムを永久高密度化ガラスに適用する。X線顕微鏡によるマルチコントラスト観察だけでは目立った不均質は見られなかったものの、X線回折からネットワーク構造の不均質に関する情報が得られる可能性がある。結果は順次まとめて公表する。
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Report
(3 results)
Research Products
(29 results)