新規の増殖因子としての細胞外鉄イオウクラスターと微生物との相互作用の解明
Project/Area Number |
20K15443
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
五十嵐 健輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90759945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 環境微生物 / 生理活性物質 / 硫化鉄 / 鉄イオウクラスター / 分離培養 / 共培養 / 難培養微生物 / 微生物間相互作用 |
Outline of Research at the Start |
自然環境中の多くの微生物が未培養である原因の一つとして、増殖に必要な因子が実験室内の培養では適切に得られないことが挙げられる。本研究では、細胞外から鉄イオウクラスターが供給されないと増殖できないような未知微生物をターゲットとして、それらの単離と生理の解明を行う。鉄イオウクラスターに構造が類似している硫化鉱物(グライガイト)の存在下で環境中の微生物群集を培養することで、細胞外の鉄イオウクラスター依存的に増殖する微生物群集を得る。そのような微生物の単離と生理解明から、細胞外鉄イオウクラスターが増殖因子として機能することを示す。更にそのような微生物の増殖を制御できる新たな技術を探索することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生物がもつ鉄イオウクラスターと部分構造が類似しているグライガイト(Fe3S4)の存在下で代謝が変化する微生物株の取得、およびその代謝変化を誘導する機構を解析することで、環境中での細胞外鉄イオウクラスター様物質の機能と、微生物生理への影響を解明することである。 前年度は、中温から高温環境、そしてアルカリ性環境からグライガイトによって増殖促進される微生物の取得に成功した。本年度は、更に単離環境の条件を拡大し、嫌気性酸性土壌、嫌気性高温油層水から同様の性質を示す微生物取得を試みた。その結果、油層水由来の微生物群集からグライガイトによる増殖促進を示すメタン菌を含む複数の株を取得することができた。加えて、より物質の授受に伴う栄養共生関係が強い微生物群集を想定し、シロアリの腸管内微生物群集から同様の性質を示す株の単離を試みた。しかし、明瞭な促進効果を示す株の取得には至っていない。 上記の実験で取得した微生物株を対象に、他の微生物株からの細胞外鉄イオウクラスターの授受が可能かを検証するために、既に取得した単離株、およびカルチャーコレクションから取得した複数種の株を用い、培養上清の相互添加による増殖への影響を評価した。 その結果、油層水環境からの水素利用性メタン菌については、他のメタン菌培養上清を添加した場合に微弱ながら促進効果が観察された。 促進因子の特定のために、培養液に含まれる鉄イオウクラスター様構造の分析を分光学的手法等によって試みた。しかしながら、想定している対象物質の濃度が著しく小さいことが起因して、物質の特定と定量に十分な品質のデータの取得には至らなかった。 現在、取得した複数の微生物株を対象に比較ゲノム解析の準備段階にあり、グライガイトによる促進機構を代謝の面から解明する試みを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度の研究結果を補強するために微生物の単離環境を更に拡大した研究を遂行した。油層水環境という新たな環境から、グライガイトによる促進効果を示す新たな微生物株の単離には成功した。更に培養上清の相互添加実験による増殖促進効果も複数の株で確認できている。しかし、本研究計画で想定していた動植物に共生する微生物群集からは、そのような性質を示す株の取得にはまだ成功していない。促進因子の濃度が想定よりも小さいことから、その構造の特定と定量化には至っていない。 昨年度と同様に実験材料調達のためのサンプリング機会、共同研究による機器分析の機会が限られたことが原因で、当初の予定より進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、特に嫌気性の多様な環境において、グライガイトによる増殖促進を示す微生物株が生息している可能性が示された。今後は、各々の単離株の増殖条件の最適化を行い、代謝促進機構の解明を目的としたゲノム解析、および網羅的遺伝子解析を行う予定である。 本年度では、節足動物の共生細菌のみを研究対象としていたが、他の無脊椎動物、更には脊椎動物の共生細菌にも範囲を広げた微生物取得、および増殖促進効果の検証実験を行うことを計画している。
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Report
(3 results)
Research Products
(1 results)