Project/Area Number |
20K15605
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 40040:Aquatic life science-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大村 文乃 日本大学, 芸術学部, 研究員 (50735561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | コウイカ / 触腕 / 捕食 / 形態 / コブシメ / 機能形態 |
Outline of Research at the Start |
イカ類は2本の長い触腕を瞬時に伸ばして餌生物を捕捉する。水の粘性に抵抗し触腕を瞬時に伸ばすためには、強い力を出しその動きを可能とする構造が必要である。触腕の起始部の硬い部分を運動の支点とするとともに、腕を補助的に利用することで触腕の瞬時な伸縮が可能となると申請者は考えた。そこで本研究では、イカ類の触腕が粘性のある水中で瞬時・強力な伸縮を可能とするメカニズムを、最先端の3次元的形態観察および独創的な飼育実験・機械学習を用いた動画解析を通じて詳細に明らかにする。本研究成果の応用によりイカ類を養殖する際の給餌技術の向上や、生物模倣技術としての工学的応用が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
イカ類は貝から進化し、進化の過程で殻を体内にしまい、高い運動性を有したグループである。現在イカ類は海生軟体動物の中でも特に高い運動力および捕食力を持ち、広く海域を利用している。広く海域に分布している魚類は脊椎という体の軸を持つことで高い運動力を有している。しかしイカ類には骨がない。骨がないにもかかわらず、水中における瞬時かつ強力な運動を可能にする機序を明らかにすることは、イカ類の海洋進出を理解するため鍵となる。 イカ類は2本の長い触腕と8本の短い腕を持ち、これらを捕食に用いる。獲物を見つけると触腕を瞬時に伸ばし、触腕先端の触腕掌部で獲物を捕らえ、触腕を素早く口の方に引き寄せる。その後獲物を腕で抱え込み、口に送る。この特徴的な捕食行動にはこれまで多くの注目が集まってきた。特に触腕の瞬時の伸縮機構の理解は、イカ類の捕食行動を特徴付ける要となるため、大変重要である。 イカ類の中でコウイカ科は2本の触腕を収納するポケットを持つ。このポケット内に触腕が“折りたたんで”収納されていると言われている。しかし、触腕がどのような形態およびどのようなメカニズムを持ち、瞬時かつ強力な伸縮を行い捕食を可能にするかは不明な点が多い。そこで本研究は、触腕の伸縮機構の解明を大目的とし、触腕の形態学的調査と捕食時の動画解析を行う。 今年度は昨年度に引き続き、触腕の動きと保持方法についての行動観察、およびポケット内触腕の形態観察を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
触腕の形態および動かし方を明らかにすることができ、十分に進捗した。また、次年度のための予備実験も十分に行うことができた。 本研究課題である触腕の伸縮機構の解明には、まず基礎的な触腕使用法の理解が必要になる。そこで捕食時の行動観察を行い、触腕がどのように使用されているかを観察した。多くのコウイカ科は触腕掌部を内側に向け、触腕ポケットの穴から掌部を口側に出して保持していた。例外的に、特に底生性が強く遊泳頻度の低いハナイカ は触腕掌部のみではなく触腕柄も口側に出し、巻いて保持していた。この結果により、触腕の保持方法は生息環境および運動様式が反映されていると考えられた。また、形態学的調査として、触腕の実態顕微鏡下での観察および組織学的観察を行った。標本は10%海水ホルマリン固定、70%エタノール中にて保存してあるものを用いた。ポケット内に収納されている触腕にはねじれが観察された。触腕にはねじれを生み出す筋が螺旋状に存在している。これらの筋の働きにより、ポケット内への収納時もねじれがついていると考えられた。 当該年度は、捕食前後の触腕の保持方法およびポケット内の触腕の収納様式を明らかにすることができた。さらに研究を進捗させるために、孵化個体と成体の捕食行動を予備的に観察した。次年度には成長に伴う行動変化についてもさらにデータを取ることが可能となる。 本研究結果は学会発表および国際論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はイカの触腕の形態学的な観察に加え、飼育実験とフィールド観察を行う。 令和4年度は、当該年度に引き続き、イカのサンプリングを市場および野外にて行う。当該年度ではマクロ形態学的とミクロ的観察を行ったが、今後はさらにミクロ的な観察に焦点を当てて触腕形態を明らかにする。大型の個体についてはビブラトームを用いて切片を作成して筋走行を観察し、小型の個体については組織学的染色を行い、触腕の筋繊維走行を観察する。これまではヘマトキシリン・エオジン染色を試したが、今後は他の特殊染色方法も用い、コラーゲン等の可視化も行う。触腕の位置による構造の差異や、イカの種による差異を調べることにより、より総合的に触腕の形態を明らかにしていく予定である。 また、フィールドおよび飼育実験により、捕食時の動画を他方向から撮影し、動画解析を行う。今年度は上下の二方向から撮影を行なったが、上下左右という他方向から撮影を行うことにより、イカの触腕の動きをより詳細に理解することができる。触腕の伸縮が撮影できた場合、動画を連続の静止画として処理し、形態に座標をとり、どの位置がどのように動いているかを座標の変化で明らかにする。コロナの状況により実施が可能な場合は野外でも同じように捕食が行われているかを、潜水調査により確認する。 これらの形態学的調査と動画解析の結果を照合し、形態と動きとの関係を明確化し、触腕の伸縮機構を明らかにしていく予定である。
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