Project/Area Number |
20K15851
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
荒川 那海 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 特別研究員 (90844754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ヒト特異的皮膚形質 / 遺伝子発現量 / プロモーターアッセイ / ゲノム編集 |
Outline of Research at the Start |
これまでの研究で私は、他の霊長類に比べヒトの皮膚は表皮と真皮を結合する基底膜の形状がその結合面積を増大させるように波型であることを明らかにした。また発現量解析により、基底膜や弾性線維の構成成分をコードする4つの遺伝子が類人猿に比べヒトの皮膚で有意に高く発現し、上記の基底膜の波型や弾性線維の増加に繋がる可能性を示した。ヒトは体毛によって外部の物理的刺激から体内部を保護することができないため、これらの形質は皮膚の強度を増加させた適応形質であると考えられる。本研究課題ではこの4遺伝子のヒト特異的遺伝子発現を生み出す塩基置換を実験的手法により特定することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの皮膚は他の霊長類に比べ多くの形態的・生理学的特徴があるが、それらがどのように進化してきたのか、その遺伝的基盤はあまり明らかになっていない。これまでの研究で私は、発現量解析によりヒト特異的皮膚形質に繋がる可能性のある4遺伝子の発現量増加をヒトの皮膚で検出した。さらにこれらのヒト特異的遺伝子発現を生み出すヒト系統での塩基置換を推定した。本研究課題では、それらの置換が実際にヒト特異的遺伝子発現を生み出しているのかを、ヒト皮膚培養細胞を用いたプロモーターアッセイとゲノム編集により解明することを目的としている。 昨年度までに、信頼性のある測定値を得られるよう、プロモーターアッセイの実験系の改良を行ってきた。安定した測定結果を得るためにはさらに実験系を見直していく必要があると考え、今年度はまず、プロモーターアッセイ用ベクターの導入前後の細胞培養条件について再検討を行った。これまでのアッセイから、細胞の植え継ぎのタイミングやベクター導入時の細胞密度が測定結果に影響を及ぼすことが分かった。これらの条件を最適化することにより、さらに安定性のある測定を行えるようになった。今後、改良したアッセイ系を用いてベクターのルシフェラーゼ遺伝子の発現量の比較を行っていく。 また、予備実験としてゲノム編集を行った細胞株を作成中であり、プロモーターアッセイで絞り込んだ候補置換について培養細胞での発現比較を行う準備を進めた。これにより、プロモーターアッセイで特定した塩基置換が、ゲノム中の他の遺伝子ではなくヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を変化させるものであるかを検証することができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はプロモーターアッセイにおいて信頼性のある測定値を得るためにアッセイ系の改良をさらに行った。ルシフェラーゼによる化学発光を測定するプロモーターアッセイでは、安定した測定結果を得ることのできる実験系の構築が重要である。手法の改良を行ったことにより、今後のアッセイで信頼性のある測定結果を得ていくことができると考えている。 また昨年度までに、ルシフェラーゼ遺伝子上流にヒト特異的発現を示した各遺伝子のプロモーター領域を挿入し、さらにその上流に転写活性を調べたいヒトゲノム領域の配列を挿入したベクターを作成した。これらのベクターを用いて測定を行った結果、挿入したヒトゲノム領域の配列には転写活性が確認された。今後、Mutagenesisによりヒトゲノム領域中の候補塩基置換サイトのみをヒト型から類人猿型の塩基に置換したベクターを作成し、この塩基の違いがルシフェラーゼ遺伝子の発現量に影響するのかを明らかにしていく。 予備実験としてゲノム編集を行った細胞株を作成中であり、プロモーターアッセイで絞り込んだ候補置換について培養細胞での発現比較を行う準備を進めた。このように、皮膚でのヒト特異的遺伝子発現を生み出す塩基置換の特定に向けて実験を進めている。アッセイ系の改良や予備実験などを踏まえて安定した実験系の構築を行うことで、今後信頼性のある実験データを得ることができる。以上のことからおおむね順調に研究課題が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までのプロモーターアッセイの結果により、推定した塩基置換サイトを含むヒトゲノム領域の配列に転写活性が確認された。そこで来年度はまず、Mutagenesisにより領域中の候補塩基置換サイトのみをヒト型から類人猿型の塩基に置換したベクターを作成する。これらのベクターを培養細胞に導入し、ヒト型と類人猿型の塩基を持つベクター間のルシフェラーゼ遺伝子の発現量を比較していく。このアッセイで発現量差が検出できたならば、ベクターに挿入する配列を類人猿の同領域配列、候補塩基置換サイトのみをヒト型にしたアッセイも行い、その置換が発現量変化に関わっているのかを明らかにする。 また、ゲノム編集の実験系の構築後、プロモーターアッセイにおいて発現量差を示した候補置換サイトを、ヒト型から類人猿型に書き換えた細胞株を作成する。ヒト型と類人猿型の塩基を持つ細胞間で、ヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を定量PCRによって比較する。これにより、プロモーターアッセイで特定した塩基置換が、ゲノム中の他の遺伝子ではなくヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を変化させるものであるかを検証することができる。 プロモーターアッセイとゲノム編集での発現比較を行うことで、着目する遺伝子のヒト特異的発現を生み出す塩基置換を特定していく。これにより、ヒト特異的皮膚形質が進化の過程でどのような遺伝的基盤によって獲得されてきたのかを明らかにできると考えている。
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