Project/Area Number |
20K20066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
田中 則広 淑徳大学, 人文学部, 准教授 (00826779)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | NHKワールド / 拉致問題 / 北朝鮮向け放送 / 対北放送 / 国民統一放送 / 自由北韓放送 / 北韓改革放送 / 北韓離脱住民 / 韓民族放送 / BBCコリア / 国際放送 / 社会教育放送 / 宣伝放送 |
Outline of Research at the Start |
日本は、戦前の反省もあり、「宣伝放送」の実施に関しては米韓に比べて慎重な姿勢を取ってきた。しかし、北朝鮮をめぐる諸問題が注目される現在、日本も対北放送実施の方向性について本格的に検討すべき時期に来ている。そこで本研究では、対北放送を実施している各放送局の番組を分析するとともに、制作担当者や亡命者に対する聞き取り調査を実施する。それらを踏まえて、日本は将来的に北朝鮮国内の拉致被害者をターゲットとした放送の継続に力を入れていくのか、あるいは、北朝鮮の住民をターゲットに人権意識を向上させるためのコンテンツに力点を置きながら放送サービスに努めるのか、今後の方向性を考えるための一助となる成果を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、第1に、韓国の「対北放送」に関する成果の報告、第2に、英国と米国における調査を実施した。 第1は、20年近い歴史を持つ韓国の民間対北放送のうち、脱北者らが中心となって立ち上げた「北韓改革放送」を対象に、その役割と課題を検討した論文を発表した。これまで、日本はもとより、韓国においてもほとんど知られてこなかった同放送局であるが、新たな知見として、聴取者を北朝鮮のエリート層に絞り、その知識レベルに合わせた内容を提供していることが確認できた。また、運営資金の大半を米国の政府系機関からの支援に限定することで、韓国の国内政治から距離を置こうとしていることも明らかとなった。 第2は、英国のBBCワールドサービスのコリア語サービス、および、米国の国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)と、非営利民間組織が国家予算を用いて運営するラジオ・フリー・アジア(RFA)に対する現地調査である。 一連の調査を通して、BBCワールドサービスでは、2023年にコリア語サービスの拠点をロンドンからソウルにシフトするなど、放送実施体制に大きな変化があったことが明らかになった。また、米国においても、2017年1月から2021年1月にかけてのトランプ政権下において、対外宣伝メディアに混乱が生じていたことが「生の声」として確認できた。これは2018年8月、VOAなどを管轄する米政府機関が再構築され(BBGからUSAGMへ)、USAGMのトップに就任したトランプ大統領の側近が放送内容に介入したことによるものである。VOAの責任者が解雇された他、理事会のメンバーも大幅に入れ替えられるなどの混乱が続いた。関係者らは、バイデン政権の誕生によって混乱はひとまず解消された、としているものの、2024年11月の大統領選挙の結果次第では、米国の「対北放送」も再び影響を受けることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外渡航上の制約などにより、実施に遅れが出ていた本研究であったが、2023年以降の海外取材を取り巻く状況が改善した結果、現地調査と研究報告を順調に推進することができた。 1990年代から2000年代にかけての韓国では、北朝鮮との関係改善を推進する進歩系政権の下、対北放送の「弱体化」が指摘されることになったが、こうした状況に対応すべく、2000年代中盤、脱北者が中心となって新たな北朝鮮向けの情報発信を開始した。そこで本研究では現地調査を基に、脱北者による対北放送局の役割と課題を検討・分析した論文「韓国在住脱北者による北朝鮮向け情報発信の役割と課題~「北韓改革放送」の事例を通して~」を発表するとともに、学会においても報告を行った。 この他、韓国の慶尚国立大学で開かれた学術交流の場において、日本における韓国ドラマの広がりについて報告した。北朝鮮国内においても韓国ドラマが「浸透」する中で、日本国内から実施する対北放送において取り上げるべき娯楽を主体としたコンテンツに関して検討する機会となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2024年度は、第1に、韓国のキリスト教団体が運営する放送局(極東放送、荒野の声放送、殉教者の声放送、北方宣教放送、希望の声放送など)の調査に取り組む。第2に、上記の在韓キリスト系放送局をも含めた各国の対北放送の運営実態調査、現地における聞き取り調査、コンテンツの分析結果などを通して得られた知見を整理し、考察を深めて学術論文、学術報告などの形で発信していく。
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