Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
我が国の温泉地には、観光需要の低迷により廃業した宿泊施設が廃墟化して残存している。温泉地の空間的魅力の向上や活性化を図るためには、民間企業による旅館再生や、それが望めないような宿泊施設に対する行政や観光関連団体による政策が求められると考えられる。そこで、本研究では廃業宿泊施設に対する介入がなされている温泉地を対象に、そのプロセスを明らかにすることを目的とする。具体的には、どのような経緯、主体、方法によって、廃業宿泊施設に対応したのかを明らかにする。それによって、廃業宿泊施設問題の解決に向けた方法論や技術的・計画的手法を明らかにする。
2023年度は主に次の研究に取り組んだ。1)2022年度に引き続き、帝国データバンク提供の全国の廃業旅館・ホテルリストをもとにその後の建物更新状況や空地化、活用状況を把握した。ただし、温泉地の住所は市街地と異なり複雑であることや、帝国データバンク把握の住所が必ずしも旅館立地住所と一致しない(経営母体の会社住所であることが多い)ため、全国的な悉皆調査の限界も判明した。2)観光庁補助事業による廃屋撤去の全国的な実態調査をおこなった。2020年度に観光庁補助事業「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」が始まり、本事業で実施できる項目の1つに廃屋撤去があった。以来、補助事業は継続し、これまで200以上の地域からの申請があった。これらの地域のうち、廃屋撤去を計画に盛り込んで申請を行った地域を、メールおよび電話調査にて把握し、一定程度の地域で観光庁補助事業によって廃屋撤去が実現できたことが確認された。3)2)の調査を踏まえて、具体的な状況を把握するため、伊香保温泉・四万温泉への調査を実施した。特に伊香保温泉は観光庁補助金を数年にわたって活用して、多くの廃業旅館の撤去を実現していたことが明らかになった。しかし、観光庁補助金は廃屋撤去事業費の1/2の補助率であること、および渋川市としては行政の財源を使わない方針を取っていたため、廃屋撤去にかかる事業者の自己負担分が大きく、全国的に問題になっているような所有者が不明の大規模な廃屋撤去のためにはこの補助金は有効に機能できないことが明らかになった。なお、本研究に関して、新聞社2社・テレビ局1社の取材を受けた。いずれも記事等になっており、本研究課題の社会的関心の高さを確認できた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
23年度はデータ分析及び現地調査を予定通り実施することができた。ただ、21年度以前のコロナ禍の影響を受けて現地訪問が進まず、全体的にはまだ調査すべき事項が残っている。
観光庁補助事業による廃屋撤去の実態解明を行う調査を継続したい。具体的な地域を選定してヒアリング調査を実施し、観光庁補助事業による廃屋撤去の可能性と課題を明らかにする。その上で、これまで取り組んできた、全国の廃屋撤去調査を踏まえて今後の廃屋撤去に向けた示唆を取りまとめたい。
All 2023 2022 2021 2020
All Journal Article (6 results) (of which Peer Reviewed: 5 results, Open Access: 1 results) Presentation (1 results) Book (2 results)
日本観光研究学会全国大会学術論文集
Volume: 38 Pages: 39-44
The Tourism Studies
Volume: 34 Issue: 1 Pages: 17-30
10.18979/jitr.34.1_17
Volume: 32 Issue: 2 Pages: 53-66
10.18979/jitr.32.2_53
130008098147
日本建築学会学術講演梗概集
Volume: 2021 Pages: 393-396
Journal of Architecture and Planning (Transactions of AIJ)
Volume: 86 Issue: 779 Pages: 137-147
10.3130/aija.86.137
130007977658
Journal of the City Planning Institute of Japan
Volume: 55 Issue: 3 Pages: 1265-1272
10.11361/journalcpij.55.1265
130007930051