Project/Area Number |
20K20584
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 44:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石野 史敏 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 非常勤講師 (60159754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石野 知子 (金児知子) 東海大学, 医学部, 客員教授 (20221757)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥25,870,000 (Direct Cost: ¥19,900,000、Indirect Cost: ¥5,970,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
Fiscal Year 2020: ¥12,220,000 (Direct Cost: ¥9,400,000、Indirect Cost: ¥2,820,000)
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Keywords | 哺乳類進化 / 霊長類•ヒトの進化 / 胎盤 / 脳機能 / ニューロン / ミクログリア / 脳の自然免疫機能 / 霊長類特異的遺伝子 / レトロウイルス / ERVPb1 / 遺伝子獲得 / ヒトの進化 / 獲得遺伝子による進化 / ヒト特異的遺伝子 / ヒト個体発生 / ヒト系統発生 / レトロトランスポゾン / 獲得遺伝子 |
Outline of Research at the Start |
ヒトゲノム中で遺伝子はわずか1.5 %で、推定遺伝子数は約20,000個とされている。これはショウジョウバエとほぼ変わらない。そのためヒト特有の性質を説明するために、遺伝子発現ネットワーク構造の変化、スプライシング多型、non-coding RNAの機能の研究や未同定のエンハンサーなどのシスエレメントの探索などの研究が推進されてきた。本研究では、ヒトゲノムの8 %を占めるLTRレトロトランスポゾン/内在性レトロウイルスのなかに新規獲得遺伝子として機能するものを同定する。これら哺乳類からヒトへの進化に伴ってヒト・霊長類固有となった遺伝子群は、実証されれば医学・生物学に大きな影響を与える。
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Outline of Annual Research Achievements |
生物進化をゲノム機能の進化と捉える観点から解析することで、哺乳類の胎盤形成機構の進化にはゲノムに挿入されたウイルス由来のDNA配列から新しい遺伝子の獲得が起きていることを明らかにした。哺乳類特異的遺伝子発現調節機構であるゲノムインプリンティング研究から同定した、胎盤形成と胎盤機能の維持に必要なインプリント遺伝子としてPEG10とPEG11/RTL1を同定したが、これは過去に哺乳類の祖先がレトロウイルスに感染し、それが内在ウイルスとしてゲノムに挿入された配列から、全く新しい機能を持つ遺伝子として哺乳類が獲得した遺伝子であることを、われわれは報告してきた。また、PEG10、PEG11/RTL1に相同性を持つ類似の遺伝子を、ヒト、マウスゲノムで探索した結果、残る9個のSIRH/RTL遺伝子を発見し、その体系的な機能解析を進めることで、これらが胎盤だけでなく、哺乳類の脳機能の高度化に関わる重要な遺伝子であることが明らかになった。これら遺伝子の機能の詳細を解明すること、および、同様のウイルス由来の獲得遺伝子が、哺乳類から霊長類、ヒトへの進化過程でも重要な役割を果たしたと考え、霊長類・ヒト特異的獲得遺伝子群の探索と、機能解明を目指した研究を行った。SIRH/RTL遺伝子の半数は胎盤で高度に発現するが、これらは脳ではニューロンに発現し、脳機能に大きく関係しているとが明らかになってきている。また、残り半数の胎盤では発現が低い遺伝子は、脳のミクログリアに発現し、脳内の自然免疫機構に関係している。ミクログリアは卵黄嚢由来の細胞であり、これによって胎盤・卵黄嚢という胚体外組織がウイルス由来の獲得遺伝子の場として働くこと、そして結果的に、ほとんどが脳機能に関係するという全貌が明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
哺乳類特異的SIRH/RTL遺伝子群が、胎盤と脳機能に関わることが明らかになり、しかも胎盤で機能する遺伝子はさらに脳のニューロンで、胎盤で発現が低い遺伝子は脳のミクログリアで機能し、細菌、ウイルス、カビなどの病原体に対する防御機能をそれぞれ持つことが明らかになった。ミクログリアは個体発生では卵黄嚢に由来するため、ほぼ全てのSIRH/RTL遺伝子群が胎盤、卵黄嚢という胚体外組織で機能を獲得したことが明らかになった。これはウイルス由来のDNA配列は、胎児側では高度のメチル化により完全に発現抑制されているが、胚体外組織では低メチル化により常にわずかに発現しているため、機能進化の選択がかかるためと考えられた。また、霊長類特異的獲得遺伝子として同定したERVPb1も、ヒトiPS細胞の分化系では、非常に初期のマクロファージ系列で発現することから、この仮説は成り立つ。このように獲得遺伝子の新たな寄与部位として、脳の自然免疫系が浮かび上がった。自然免疫はほぼ全ての動物に存在する普遍的な免疫系であるが、哺乳類や霊長類の進化においては、ここにも新たな機能遺伝子が参加し、自然免疫系の強化が起きていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルス由来の獲得遺伝子が進化に重要な寄与を果たした組織として、胎盤に加えて脳がクローズアップされてきたため、これらの遺伝子のニューロン、ミクログリアにおける機能を明らかにすることを目指す。これにより、ヒトの脳機能に関わる重要な知見を得ることができると考えている。
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