Project/Area Number |
20K20949
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高谷 康太郎 京都産業大学, 理学部, 教授 (60392966)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 異常気象 / 偏西風の南北蛇行 / 位相依存性のないエネルギー変換 / ロスビー波伝播 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「位相依存性のないエネルギー変換」の定式化の確立と、その成果を用いて異常気象の発生のメカニズムを解明する事を目的とする。異常気象の力学解明には、偏西風の南北蛇行の理解が決定的に重要であるが、蛇行がどのように発生・収束するかについては、力学理論が完成していない。本研究はまず、偏西風のエネルギーが蛇行エネルギーに変換されるエネルギー変換項を位相依存性のない形で定式化する事により、この理論の完成を目指す。さらに、その成果を基に観測データの解析を行い、異常気象発生メカニズムの解明に繋げる。テーマの困難さゆえ、本研究の遂行が可能なのはほぼ申請者だけであり、挑戦的研究として大いに価値がある。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大きく二つの要素から成り立っている。一つは大気循環エネルギー変換の理論構築であり、もう一つはその理論成果に基づく大気循環データの解析である。2023年度においても、その双方において非常に大きな進展を得ることが出来た。 まず、理論構築の面では、位相依存性のないエネルギー変換項の定式化に関して、2022年度に発見した新たな物理量をもとに、2023年度にはさらに理論の完成に向けての研究を進めた。2022年度に発見した新物理量は、擾乱が停滞性や移動性かに関わらず、擾乱および基本場の双方のエネルギー時間発展方程式を整合的に記述できる量である。2023年度には、擾乱エネルギー方程式に現れる強制項を位相依存しない形で定式化することに成功するという極めて大きな成果を得ることができた。これにより、たとえば、熱帯対流活動に起因する発散風がもたらす中緯度での渦度強制をより正確な形で定量的に評価できるようになる。いままではこの定量評価が困難であったのだが、それが可能になれば、中高緯度域の長期季節予報の精度向上に直結するなどの成果が期待できる。現在、この画期的な結論についての論文を鋭意作成中である。 加え、筑波大学の植田宏昭教授のグループと、北半球の物質循環と気候変動の関係を解明した成果、および、2021年8月の日本の大雨に伴う大気循環変動の本質を明らかにした成果を、ともに論文として出版した。この成果は、報告者の理論研究の成果を異常気象研究に適用するにあたっての「前準備」、という意味も含むものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目標は、位相依存性のないエネルギー変換項に関わる新しいエネルギー論の理論的構築を完成させることである。報告者のこれまでの研究で、位相依存性のないエネルギーおよびその変換項について、エネルギーフラックスを含む形で理論を整合的に記述することに成功していた。しかもこれは基本場エネルギーの時間発展方程式とも整合する形となっている。ただこれまでの理論では、強制項の位相依存しない形での表式化はなされていなかった。今年度、その課題に取り組み、その結果として、擾乱エネルギー方程式に現れる強制項を位相依存しない形で定式化することに成功するという極めて大きな成果を得ることができた。これにより、たとえば、熱帯対流活動に起因する発散風がもたらす中緯度での渦度強制をより正確な形で定量的に評価できるようになる。現在、この画期的な結論についての論文を鋭意作成中である。 上記の理論的成果の他にも、報告者の理論研究の成果を異常気象研究に適用するにあたっての「前準備」の意味も込めて、北半球の物質循環と気候変動の関係を解明した成果、および、2021年8月の日本の大雨に伴う大気循環変動の本質を明らかにした研究を行った。筑波大学の植田宏昭教授のグループと行って得たこの成果は論文として既に国際学術誌に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「進捗状況」で説明した通り、現在までの研究により、位相依存性のないエネルギー変換項を含むエネルギー論は、より高精度で体系的に構築されている。一連の研究で発見した新しい擾乱物理量や、擾乱エネルギーの方程式系における位相依存しない強制項の定式化など、今までの研究で得られた「位相依存性のないエネルギー変換の定式化」の成果について、早急に論文化して国際学術誌への出版を目指す。また、本研究で取り扱う「位相依存性のないエネルギー」という観点で、既存の大気循環変動のエネルギー論がどのように変更されるか、または新しく記述出来るかを明らかにする。また、この「位相依存性のないエネルギー」が広く学術コミュニティに受け入れられるために、論文化に加え、積極的に学会等で発表する。いずれにせよ、本研究課題の成果は非常に斬新で画期的な成果のため、1日も早く学術論文を公開し、学術コミュニティによる評価・批判が必要であろうと判断している。 さらに上記成果を基にしながら、本年度は、エルニーニョなど外部要因が大気循環変動にもたらす影響を観測データ解析から定量的に正しく評価することを通じ、異常気象の発生メカニズムを解明することを目指す。これまでの研究における、エルニーニョ発生時の中高緯度大気循環変動の影響調査で用いた渦度強制解析は、やや精度に欠ける側面があった。そこで、本研究での成果である「位相依存しないエネルギー変換の定式」を用いて、より正確で定量的な調査を進める予定である。
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