Project/Area Number |
20K21973
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
千賀 由佳 龍谷大学, 法学部, 講師 (40876174)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 中国文学 / 仏教寺院 / 杭州 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、中国近世通俗小説の成立・発展の過程を、仏教寺院との関係を通じて追求するものである。申請者は、たびたび小説の舞台となる江南地域(ここでは長江下流域をいう)の仏教寺院に注目し、複数の小説作品中の記述を横断的に取り上げて検討すると同時に、寺誌・地方誌・档案・類書等の諸資料を活用して当時の寺院の様子や関連する人物・伝承を調査し、通俗小説と仏教寺院との関係について総合的な考察を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、江南地域の寺院が出てくる白話小説に注目し、その内容を寺誌や地方誌の記述と照らし合わせて検討し、通俗小説と仏教寺院の直接的または間接的な関係を探ろうとする複数の論文を、これまでまとめてきた。論文中で扱った小説には、共通して高僧が登場する。たとえば「明末通俗文学中の僧侶と杭州寺院――『三宝太監西洋記』を例に」(『中国俗文学研究』第26号)で扱った『三宝太監西洋記』には金碧峰、「『西湖二集』巻八における高僧の応身・転生譚――『永明道蹟』を手がかりに」(『明清文学論集』編集委員会編『明清文学論集 その楽しさ その広がり』、東方書店)で扱った『西湖二集』巻八には永明延寿、「小説中の仏印と寺院」(『龍谷紀要』第45巻第2号)で扱った「五戒禅師私紅蓮記」には仏印という高僧がそれぞれ登場するが、作中では彼らが活躍する舞台として浄慈寺や霊隠寺といった杭州寺院が設定される。各論文ではそれぞれの史実との関係を検討し、これらの寺院が作品に取り上げられた背景や当時の寺院の状況、先行する白話文学作品等との符合について考察を行った。 上記のうち、『三宝太監西洋記』や「五戒禅師私紅蓮記」とは異なり、『西湖二集』巻八では高僧と寺院との関連について史実に基づく内容になっている。この作品の内容は、明末に浄慈寺僧により編纂された『永明道蹟』と類似しており、そこから杭州の文人ネットワークとのつながりが窺えた。同じ『西湖二集』巻八を題材に、明末杭州士大夫の准提信仰と対照しながら、作中に取り上げられる准提真言について検討したのが「明末白話小説中真言信仰浅析」である(2024年4月に国際学会で発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、諸資料を活用して明末までの浄慈寺・霊隠寺等の杭州寺院の状況や関連人物を調査し、論文を執筆・発表することができている。また杭州以外の地にあるいくつかの寺院の状況についても調査を行い、論文の中で触れることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査で扱った小説作品の一つである『西湖二集』は、杭州を舞台としており、当時士大夫の間でも流行していた准提信仰が取り上げられるなど、明末の杭州士大夫の仏教信仰の実態をある程度反映していると思われる白話小説集である。今後はこの作品を主な題材とし、特に作中の寺院に関する記述に注目して、登場する寺院の名やそれらの明代における個別の状況、関連する僧侶や文人等について、さらなる調査を進めていく。その際、これまでに行ってきた研究を踏まえて、総合的な考察につなげていけるように試みる。また、広く小説や戯曲といった通俗文学作品と仏教の関わりについても、引き続き知見を深めていきたい。
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