Project/Area Number |
20K22480
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0402:Nano/micro science, applied condensed matter physics, applied physics and engineering, and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
荒井 慧悟 東京工業大学, 工学院, 助教 (10786792)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 量子センシング / ダイヤモンド / 量子制御 / ノイズ・スぺクトロスコピー / NMR / 電子スピン / コヒーレンス |
Outline of Research at the Start |
ダイヤモンド中の窒素・空孔欠陥 (NVセンター)は、高感度・高解像度の磁場センサーや、常温で動作可能な量子ビットとして機能する量子システムだ。現在、NVセンターのコヒーレンス時間が、窒素欠陥 (P1センター)由来のノイズにより制限され、どちらの応用も開発が停滞している。本研究は、P1センターのノイズ分布を解明するとともに、コヒーレンス時間を物理限界である縦緩和時間T1(~500us)まで伸長する手法を確立することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンド中の窒素・空孔欠陥 (NVセンター)は、次世代IoTへの利用が期待される量子センサのひとつであり、幅広い温度・圧力環境で高感度・高解像度を提供可能である。これらの性能のうち感度については、スピン射影雑音限界やショット雑音限界等の標準量子限界によって律速される。特に、スピン射影雑音限界を決める要因のひとつであるNVスピンのコヒーレンス時間は、窒素欠陥 (P1センター)由来のノイズにより制限されており、まだまだ伸長の余地がある。そこで本研究では、P1センターのノイズ分布を解明するとともに、コヒーレンス時間を物理限界である縦緩和時間T1(~500us)まで伸長する手法を確立することを目標としている。
2021年度は、前年度に構築したNVスピンおよびP1スピンのパルス制御が可能な装置を用いて、スピンコヒーレンス時間の伸長度合いの測定に取り組んだ。NVセンターに対してはラムジー・パルス列を印加してT2*コヒーレンス時間を計測できるようにした。一方で、P1センターに対しては、①RFを連続波として印加するスピンロック法、②RFπパルスを一度印加するスピン・エコー法、③RF πパルスを等間隔で多数印加する動的減結合法をそれぞれ適用し、NVセンターのT2*コヒーレンス時間を解析した。その結果、RF強度およびラムジー歳差運動時間によって①または③の一方が有利になることが少しずつわかってきている。
次年度は、どのような条件でどの手法が有利になるのかを包括的に調査するとともに、これまでに構築してきたOrnstein-Uhlenbeck過程に従う量子多体系モンテカルロ・シミュレーション基盤やノイズ・スぺクトロスコピー理論を用いて上記の違いを説明することを目標とする。最終的には、本手法によるコヒーレンス時間の理論的限界を明らかにし、スピン射影雑音限界の改善度を定量的に評価することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度以降は、コヒーレンス時間をT1限界に漸近させるため、P1センターへの動的減結合が有効に作用する条件(つまり、様々な試料においてコヒーレンス時間が最長となるようパルス数・間隔・形状)を明らかにすることを目標としていた。
①実験はおおむね順調に進展:当初の予想通り、従来のスピン・エコー法に比べて、動的減結合法のほうがコヒーレンス時間が伸びることを確認している。これまでのところ、スピン・エコー法に対する動的減結合法の優位性は、どのような実験条件でも変わらないと結論されている。一方で、当初は予定していなかったスピンロック法も試したところ、RF強度や自由歳差運動時間等の実験条件によっては、スピンロック法のほうが優れていることが少しずつわかっており、その優位性の定量評価は次年度も継続して取り組む予定である。
②数値計算・理論構築はおおむね順調に進展:今年度は、Ornstein-Uhlenbeck過程に従う量子系のノイズ・スぺクトロスコピー理論や、古典系に従うモンテカルロ・シミュレーションにより前述の動的減結合法の優位性の定性的説明に取り組んだ。一方で、スピンロック法をこれらの枠組みに取り込むことが次年度の新たな目標に加わっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に取り組み始めた①RFを連続波として印加するスピンロック法、②RFπパルスを一度印加するスピン・エコー法、③RF πパルスを等間隔で多数印加する動的減結合法のそれぞれに対して、コヒーレンス時間の変化をさまざまな実験条件(RF強度、自由歳差運動時間、P1濃度)でより定量的かつ包括的に計測する。試料についても、様々なP1センター濃度のものを用いて、コヒーレンス時間が最長となるようパルス数・間隔・形状を探索する。昨年度に導入できなかったパルス安定化のため精度0.1Kの温度制御システムも、必要に応じて開発・導入する。
本実験で測定された結果は、Ornstein-Uhlenbeck過程に従う量子多体系モンテカルロ・シミュレーションやノイズ・スぺクトロスコピー理論の枠組みで包括的に理解することを目指す。特に高濃度の試料において顕著となる、多体局在化や前期熱平衡化等の物理学への波及効果、ハイゼンベルク限界へ繋がるスクイーズド状態制御についても引き続き考察する。
さらには、次世代の超高感度量子センサの実現に向けて、本手法をアンサンブルNVセンターに適用する際の実験的制約や課題を洗い出す。
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