分裂酵母とヒトの3Dゲノム構造とその形成機構の解明
Project/Area Number |
20K23376
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Home-Returning Researcher Development Research)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Biological Science
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野間 健一 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30900039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 信哉 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (00631194)
谷澤 英樹 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (70402550)
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Project Period (FY) |
2022-02-18 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥55,770,000 (Direct Cost: ¥42,900,000、Indirect Cost: ¥12,870,000)
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Keywords | 3Dゲノム構造 / クロマチンドメイン / 分裂酵母 / 細胞老化 / 転写制御 / ゲノミクス / コンデンシン / ヒト |
Outline of Research at the Start |
申請者のこれまでの研究によって、分裂酵母ゲノムの全体構造がサイズの異なるクロマチンドメインの多重構造体であることが示された。そこで本研究では、異なるタイプのドメイン構造の細胞周期を通した分布やその形成機構の全容解明を目指す。また、ヒト細胞を用いて、老化細胞に特異的なゲノム構造やその形成機構の解明を目指す。本研究は、発展途上の『3Dゲノム』分野において、進化上保存された根幹となる分子機構の解明が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
【課題 ① 分裂酵母ゲノムのドメイン構造とその形成機構の解明】 in situ Hi-C実験を行い、従来の検出限界を超える超高解像度の3Dゲノム構造情報を取得した。この解析により、数kbの非常に小さいクロマチンドメイン構造(遺伝子ドメイン)を検出した(次年度の論文投稿予定)。更に、変異型コンデンシン因子を発現させた細胞を用いてin situ Hi-C実験を行い、3Dゲノム構造を解析した所、コンデンシンと転写関連因子との結合が、コンデンシンの遺伝子領域への導入と、クロマチンドメイン形成の両方に関与するという非常に興味深い3Dゲノム構造の形成機構に関する知見が得られた(次年度の論文投稿予定)。さらには、コンデンシンと結合する新規タンパク質群の同定にも成功した。
【課題 ② ヒト老化細胞の3Dゲノム構造とその形成機構の解明】 in situ Hi-C実験を行い、老化細胞に形成される3Dゲノム構造を高解像度で明らかにした。このデータを新たに開発したアルゴリズムで解析することで、遺伝子のプロモーター領域とエンハンサー領域間の相互作用を網羅的に推定することが出来た。また、RNA-seq実験を実施し、老化遺伝子の転写活性化を検出できた。興味深いことに、3Dゲノム構造の分析から、遺伝子のプロモーター領域が複数のエンハンサーと相互作用しており、その相互作用の数が転写活性化に寄与していることが示された。加えて、細胞老化を誘導可能な細胞系を構築し、細胞老化に伴う細胞核内のタンパク質の量的および質的な変化を質量分析で大規模に調査した。その結果、細胞老化の進行に伴う量的な増加・減少が見られないタンパク質の中に、高度に同一の翻訳後修飾を受けるタンパク質群を見出した(次年度の論文投稿予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【課題 ① 分裂酵母ゲノムのドメイン構造とその形成機構の解明】 分裂酵母株の作成とin situ Hi-Cゲノミクス実験を行い、超高解像度の3Dゲノム構造情報を取得した。現在は、異なる細胞周期段階の細胞で同様の実験を行うための細胞株を作成中である。また、3Dゲノム構造形成、特にクロマチンドメイン形成に関与するタンパク質群を網羅的に検出するためのプロテオミクス実験系を構築中である。加えて、コンデンシンによるドメイン形成機構の解明も当初の予定通り進んでいる。さらには、コンデンシンと結合する新規タンパク質群の同定にも成功した。
【課題 ② ヒト老化細胞の3Dゲノム構造とその形成機構の解明】 ヒト肺組織由来の線維芽細胞(IMR-90)で発がん性Ras(H-RasV12)を過剰発現させ、がん遺伝子誘発性老化(Oncogene-Induced Senescence; OIS)を誘導した。OIS 誘導後の細胞を回収し、in situ Hi-C実験とRNA-seq実験を行い、老化細胞の3Dゲノム構造と転写プロファイルを決定した。加えて、in situ Hi-Cデータから遺伝子のプロモーター領域とエンハンサー領域間の相互作用を検出するアルゴリズムの作成に着手し、プロモーターとエンハンサー間の相互作用を網羅的に推定した。 一方で、プロテオミクス解析の実施には実験材料の均質性が極めて重要となるため、細胞老化を効率よく誘導できる細胞株の作成を試みた。作成した細胞株が薬剤の添加により、短時間で同調してOISの表現型を示すことを確認した。次いで、調整した老化細胞と増殖性細胞からそれぞれ細胞核を単離し質量分析を行い、タンパク質の量的及び質的変化を解析した。その結果、ある特定のタンパク質群について、細胞老化の進行に伴う量的な増加・減少は見られないが、高度に同一の翻訳後修飾を受けることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
【課題 ① 分裂酵母ゲノムのドメイン構造とその形成機構の解明】 次年度に検出した遺伝子ドメインに関する論文を発表する予定である。この研究では、異なる細胞周期におけるクロマチンドメイン構造のゲノム上での精密な分布と、それらのドメインが集合して形成されるゲノムの全体構造に焦点を当てる。そのために、異なる細胞周期段階の細胞から核を分画し、DNAに結合している全タンパク質の組成を質量分析により決定する。加えて、転写関連因子とコンデンシン間の結合を介したクロマチンドメイン構造の形成機構に関する論文も次年度に発表する予定である。さらに、コンデンシンが結合する新規タンパク質群の同定に成功したので、これらの新規タンパク質結合の機能解析を進める。
【課題 ② ヒト老化細胞の3Dゲノム構造とその形成機構の解明】 細胞老化の誘導と変異型コンデンシンの発現を同時にできる細胞株を用いてin situ Hi-CとRNA-seq実験を行い、老化細胞における3Dゲノム構造の形成機構と老化遺伝子の転写活性化機構の解明を進める。この研究により、コンデンシンと転写関連因子間の結合を介したゲノム構造の変化と、その変化が老化遺伝子の活性化にどのように寄与するのかを理解することを目指す。また、特定のタンパク質群において老化細胞特異的に同一の翻訳後修飾を受けていることが検出されたので、これらのタンパク質の観察と機能解析を進め、次年度中の論文発表に結びつける。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)