Project/Area Number |
20KK0078
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (B))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
氏家 恒太郎 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40359188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
纐纈 佑衣 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (20726385)
西山 直毅 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (30746334)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥16,900,000 (Direct Cost: ¥13,000,000、Indirect Cost: ¥3,900,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 花崗片麻岩 / 石英脈濃集帯 / 泥質片岩 / 大陸衝突帯 / 流体 / 交代変成作用 / 反応帯 / 炭質物ラマン温度計 / 石英ラマン圧力計 / 交代作用 / プレート沈み込み帯 / コルシカ島 / 変成岩 |
Outline of Research at the Start |
暖かいプレート沈み込み帯では、断層での低速すべりを反映したスロースリップが地震発生帯下端側で繰り返し発生することで、海溝型巨大地震を引き起こす可能性が指摘されている。しかし、冷たい沈み込み帯では、地震発生帯下端側でのスロースリップの発生の有無さえ良く分かっておらず、スロースリップをもたらす低速すべりの実態、発生メカニズムも不明である。そこで、世界でも産出が稀な冷たい沈み込み帯深部で形成されかつ上昇期の変形の影響が少ないフランス・コルシカ島の変成岩を対象に、イギリスとイタリアの研究者と共同で地質調査を行い、冷たい沈み込み帯におけるスロースリップの実像と発生メカニズムを世界に先駆けて解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナの影響で2022年度にようやくコルシカ島への渡航が実現した。イタリア・ピサ大学での研究打ち合わせ後、コルシカ島へ渡航し、Francesca博士及びピサ大学教員の案内のもと、緑色片岩相からエクロジャイト相に至る変成作用を受けた変成岩が露出するコルシカ島東北部において地質調査と炭質物を含む頁岩、粘板岩、変成石灰岩試料採取を行った。地質調査では、(1)ヘルシニアン造山運動を受けた花崗片麻岩が大陸衝突に伴って沈み込んでいること、(2)大陸衝突帯の上盤側は、付加体で認められるような海洋プレート層序を保持していること、(3)泥質岩中に大陸プレート沈み込みの際に形成された石英脈が濃集して認められることが明らかになった。採取した試料は脆いため、試料調整が困難であることが判明した。そこで、試料調整方法を検証し、炭質物ラマン温度計を用いて最高到達温度を算出するのに最適な方法を検討した。
Francesca博士とFagereng博士の研究室に所属するDe Caroli博士課程学生が来日し、石垣島・トムル変成岩を対象に地質調査と岩石試料採取・分析を共同で実施した。その結果、(1)緑色片岩から青色片岩への累進変成作用時に体積減少、脱水、カルシウムの排出が起こり、これにより緑簾石脈が形成されていること、その際石英脈の元となるシリカは排出されていないこと、(2)深部スロー地震発生域での石英脈発達をもたらす流体の起源は、泥質片岩からの脱水であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fagereng博士と共同で、長崎・西彼杵変成岩で得られた研究成果を3編の査読付き国際共著論文として公表した。
コルシカ島東北部での地質調査により、花崗片麻岩が温度の低い古い(冷たい)プレートとともに沈み込んだことが見出された。今後、採取した試料を用いて微細構造解析を行うことにより、ひずみ速度を定量することが可能となる。また、ピサ大学の教員との議論で、沈み込んだ花崗片麻岩の厚さに関する情報を得ることができた。これにより、すべり速度を定量することが期待でき、冷たい沈み込み帯におけるスロースリップの有無を検討する手掛りを得ることが出来た。一方、泥質岩中に認められる石英脈の濃集は、沈み込み帯におけるテクトニック微動の痕跡として研究代表者が論文で提案している特徴と極めて類似しており、大陸衝突帯におけるテクトニック微動の有無を検討する上で、重要な手掛かりとなりうる。
石垣島・トムル変成岩での共同研究では、深部スロー地震発生域での石英脈発達をもたらす流体の起源は、海洋地殻の脱水ではなく泥質片岩からの脱水であることが明確に示された。海洋地殻から脱水は起こるが、体積は減少しシリカは排出しない。つまり流体圧上昇に伴う石英脈形成は起こらない。これらの新知見は、高流体圧下での深部スロー地震の発生は、海洋地殻からの脱水に起因するという従来の考えを改めるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
コルシカ島東北部で採取した花崗片麻岩試料を用いて、電界放出型走査電子顕微鏡及び電子線後方散乱回折による微細構造解析を行い、ひずみ速度を定量する。また、コルシカ島へ渡航し、Francesca博士と共同で、2022年度に見出した泥質岩中の石英脈濃集帯を対象とした地質調査を行い、室内分析・微細構造解析のための試料を採取し、テクトニック微動との関連性や石英脈をもたらす流体の起源を検討する。
温度の高い新しい(暖かい)プレートが沈み込んだ際に形成された石垣島・トムル変成岩を対象とした共同研究を継続して行い、石英脈を対象とした微細構造解析に基づくひずみ速度の定量を行う。また、地質調査に基づき、石英脈濃集帯の厚さを計測する。これにより、暖かいプレートと冷たいプレートが沈み込んだ際のすべり速度を比較・検討し、スロースリップが暖かいプレート沈み込み帯だけでなく冷たいプレート沈み込み帯でも発生しうるか、変形メカニズムとともに検討する。更に、炭質物ラマン温度計と石英ラマン圧力計を用いてピーク温度圧力条件を検討し、なぜ緑色片岩と青色片岩が共存しうるのか、全岩組成分析とシュードセクション法に基づいて検討する。
8月18日から22日に仙台で開催される国際会議Water-Rock Interaction WRI-17において、 Fluid-rock interactions during slow and fast earthquakesというセッションを研究代表者がコンビーナとして実施する。このセッションにおいて、これまでの研究成果を本研究関係者が発表する。
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