Project/Area Number |
20KK0176
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (B))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 48:Biomedical structure and function and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 和彦 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00250738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 弘季 東北大学, 医学系研究科, 助手 (00448268)
落合 恭子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10455785)
西澤 弘成 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (30846655)
松本 光代 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (80400448)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥18,070,000 (Direct Cost: ¥13,900,000、Indirect Cost: ¥4,170,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 膵癌 / 乳癌 / 頭頸部癌 / 転写因子 / エピジェネティクス |
Outline of Research at the Start |
代表者は転写因子BACH1が膵癌転移を促進することを突き止めた。一方、Rosner教授は、BACH1が乳癌の転移を促進することを報告している。これらの知見をどう診断や治療に活用できるか、世界的にみてもまだ具体的な薬剤や診断法の提案には至っていない。一方、転写因子によるがん化機構を理解する上では、転写因子とその相互作用タンパク質、転写因子の標的遺伝子が形成する遺伝子制御ネットワークを理解する必要がある。本研究では、Rosner教授との共同研究でBACH1ネットワークの全貌とそのがん細胞での役割を解明する。さらに、Kundu教授との共同研究でBACH1等を標的とする薬剤候補分子を探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
インドTapas Kundu教授らとの共同研究ではPC4による核小体クロマチン制御機構についてさらに研究を進めた。前年度までにPC4ノックアウトB細胞では核小体周辺ヘテロクロマチンが減少し、Histone H3 K9トリメチル化(H3K9me3)も減少すること、しかし、核内全体のH3K9me3量は大きな変化を示さないことを見いだしていた。これと関連する知見について論文作成を進めるため、五十嵐がインドを訪問し討論と実験を実施した。得られた結果を論文にまとめ、ほぼ完成したので共著者への回覧を経て近日中に投稿予定となっている。さらにこのヘテロクロマチン変化の生理的病理的意義を探るために、PC4ノックアウトマウスにおけるB細胞の変化を詳細に調べた。PC4ノックアウトにより老化様B細胞がより早期に出現することを見いだした。このクロマチン構造変化の詳細を調べるために、ATACシークエンスなどを実施しつつある。 米国Marsha Rosner教授らとの共同研究では、乳癌および膵臓癌において転移促進や対酸素環境適応に関わることが予想されるBACH1標的遺伝子群を複数同定し、昨年に引き続きそれらの機能解析を進めた。さらに頭頸部癌についてもBACH1の機能を調べた。膵臓癌ではBACH1により上皮間葉転換EMTが生じ転移が促進し、BACH1ノックダウンによりEMTが逆転しMETが生じる。BACH1ノックダウンによるMETでは、鉄量の低下が生じること、鉄低下が細胞接着因子発現上昇を引き起こすことを、BACH1標的遺伝子のダブルノックダウンなどによりほぼ確定することができた。乳癌ではこれまで全く注目されていなかった新規BACH1標的遺伝子を見いだし、その機能評価と転移への関係を調べた。頭頸部癌では、BACH1による細胞内遊離鉄濃度上昇が癌細胞の増殖にほぼ必須であることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PC4によるヘテロクロマチン形成促進が、核小体機能と密接に関連するという当初予想していなかった新たなメカニズムを発見することができた。さらに、その生物学的意義として、抗体産生を担うB細胞の変性(老化様変化)をおさえるというこれまた予想外な知見を得ることができた。酵母ではヘテロクロマチンの形成不全が老化を引き起こすことが証明され、その制御因子の高等生物ホモログが老化過程に関わることが報告されているものの、ヘテロクロマチン形成不全が実際に老化に関わるのか、いまだ混沌としている。PC4はこれまで老化との関係性はほとんど知られていなかった。しかし、共同研究者のTapas Kundu教授らはPC4がオートファジーを制御することを見いだしており、一方、オートファジー不全は老化に関わることが報告されていることから、PC4が老化に関わる可能性は本研究でも注目してきた。実際に、PC4がヘテロクロマチン維持に必須であることが判明し、しかも個体レベルでもB細胞の老化抑制に必須であることが判明したことから、老化とクロマチン制御を結ぶ重要な因子としてのPC4の位置づけが明確になりつつある。 一方、BACH1によるがん悪性化機構について、乳癌、膵癌、頭頸部癌を比較しつつ研究を進めたことで、BACH1下流遺伝子の癌種特異性と共通性に関する理解が大いに進んだ。特に、膵臓癌および頭頸部癌で鉄代謝変動の重要性が確立しつつあり、これを乳癌でも検証していくことで、他の癌研究とは一線を画するオリジナリティーの高い研究となっていくことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. PC4による核小体制御に関する論文を投稿し、必要な追加実験を実施する。 2. PC4ノックアウトマウスのB細胞について、遺伝子発現変動、クロマチン開放領域マッピング(ATACシークエンス)のデータを統合解析することで、核小体に含まれるリボソーム遺伝子の構造変化、核小体周辺に位置することが報告されているヘテロクロマチン構造変化、発現変動遺伝子群のヘテロクロマチン構造変化などの関係性を解明する。また、これら変化が通常加齢マウスにおけるB細胞老化を反映するのか、加齢マウスを使って調べる。 3. 乳癌の解析から見いだした新規標的遺伝子について、in situ transcriptomeなどの手法を組み合わせてさらに機能解析を進めるとともに、膵臓癌、頭頸部癌についても関与の有無を検討する。低酸素応答への関与を特に注目して検討する。 4. 膵臓癌と頭頸部癌では鉄代謝がBACH1の重要な標的となっていることを見いだした。一方、乳癌と鉄の関係はほとんど報告もなく、私達もてをつけてこなかった。そこで、BACH1ノックダウン乳癌細胞で鉄代謝が変動するかどうかを調べ、変動する場合(予想では利用可能鉄の低下)、それに応じた変化、例えばミトコンドリア電子伝達系やリソソームなどが障害されるかどうかを調べて行く。 5. 膵臓癌と頭頸部癌では鉄代謝については、ICP-MS法を用いることでBACH1ノックダウンで生じる鉄変化を絶対定量する。総鉄量が変化しない場合でも利用可能鉄が変化する、例えばリソソームに鉄が蓄積する可能性なども考えられるので、リソソームやミトコンドリアを単離して鉄を定量する実験なども必要に応じて行う。さらに鉄の変化が低酸素応答を誘発する可能性も調べる。
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