精子における膜電位シグナルによる脂質リモデリングの解明
Project/Area Number |
20KK0376
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 48020:Physiology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河合 喬文 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70614915)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥14,040,000 (Direct Cost: ¥10,800,000、Indirect Cost: ¥3,240,000)
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Keywords | TMEM16 / 精子 / 膜電位 |
Outline of Research at the Start |
一般に細胞の膜電位情報は「電位依存性イオンチャネル」によって感知され、それに伴うイオンの流出入によって細胞生理機能が制御される。一方で、申請者は近年精子において、膜電位依存的に酵素活性を示すVSP(Voltage sensing phosphatase)に着目し、「電気信号を感知してイノシトールリン脂質レベルを制御する」メカニズムを明らかにした。本研究ではこの概念をさらに検証・拡張し、最終的には「電気信号を感知して脂質分布を制御するメカニズム」を解明することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
従来、細胞がもつ電気信号である膜電位は「電位依存性イオンチャネル」と呼ばれる分子によって感知され、この分子は膜電位に応じてイオンの流出入を示す。一方で、電位依存性ホスファターゼは、イオンチャネル活性を持たず、酵素ドメインであるホスファターゼドメインを持ち、電位依存的にイノシトールリン脂質に対するホスファターゼ活性を持つという非常に興味深い蛋白質である。 私は近年精子において、この膜電位依存的に酵素活性を示すVSPが、「電気信号を感知してイノシトールリン脂質レベルを制御する」メカニズムが存在することを明らかにした。本研究ではこの概念をさらに拡張し、最終的には「電気信号を感知して脂質分布を制御するメカニズム」を解明することを目的としていた。 TMEM16ファミリー分子はCa2+によって活性制御を受ける有名なスクランブラーゼファミリーであるが、そのスクラブラーゼ活性の際にイオン電流も生じることが知られている。昨年度は、TMEM16Fの解析にノウハウのあるHuanghe Yang lab(米・デユーク大学)に長期滞在し、TMEM16Fがイノシトールリン脂質PIP2による制御を受けることを確認した。 私の研究から、精子ではVSPを介したPIP2感受性分子の制御には高いPIP2親和性が重要であることが明らかになっている(Kawai et al., PNAS,2019)。そこでTMEM16FのPIP2親和性を他のイオンチャネルと比較することで検証した。その結果、TMEM16FはPIP2に対して比較的高い親和性を持っていることが明らかとなり、精子においてもTMEM16FがPIP2による制御を受けている可能性があると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、電気生理学的な解析に特有の「クセ」を持っているTMEM16Fについて、その特徴を理解し、VSPを介した解析を行うこと、そのPIP2に対する親和性を解析することが出来た。私の解析から、精子では精子特異的K+チャネルSlo3と呼ばれる分子が実際にVSPを介したPIP2による制御を受けることが分かっている。しかし精子では特殊なPIP2環境が存在していることも明らかになり、精子において膜蛋白質がPIP2による制御を受けるためには極めて高いPIP2親和性が必要であることが明らかになった。TMEM16Fについては、Slo3程ではないものの、比較的高めのPIP2親和性を持っていることを定量的に明らかにすることが出来た。このことは、TMEM16Fが精子においてもVSPによるPIP2を介した制御を受けている可能性を有しているものであり、今後はそのPIP2との空間分布の関連性も含めた解析を行うことで興味深い発見に繋がると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の知見を基に、来年度は実際にVSPによるTMEM16分子の制御機構がマウスの生体内に存在し得るのかについて引き続き検証していきたい。また上記に述べた通り、今回の我々の発見は、TMEM16Fが精子においてもVSPによるPIP2を介した制御を受けている可能性を有しているものであり、したがってそのPIP2との空間分布の関連性も含めた解析を行うことが出来ればと考えている。そのためには凍結レプリカ法などの技術を視野に入れて解析を行っていきたい。 また、TMEM16Fはホスファチジルセリンを対象としたスクランブラーゼであるため、VSPの解析に併せてこの分布がどのように変化していくのかについても調べたいと考えている。 加えて、VSPが精子の膜電位によってどのように活性化を受けているのかというのも重要な課題である。この点は基課題で解析を行っている段階であり、ここから得られた解析結果と併せて議論を行っていきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)