Research Abstract |
ポーラス金属をはじめとするセル構造体は,軽量,高吸音,高エネルギー吸収,低熱伝導など優れた特性のため,最近,新たな構造材料として注目されている.気孔形状が球状に近いと気孔周辺に応力集中が生じ,強度が著しく低下するという従来の発泡金属や焼結金属の欠点を補うべく,近年,一方向に整列した円柱状の気孔をもつロータス型ポーラス金属が開発されている.ロータス型ポーラス金属は通常,凝固法により作製されるが,本研究では,新しい造形法として最近注目されはじめた積層造形法に着目し,これまで作製が困難で全く学問,研究の対象となっていない種々の高次中空構造をもっ傾斜化セル構造体を実際に作製して,降伏応力や弾性率などその力学特性を実験的に評価しすることを目的としている.Tiを供試材として積層造形法により貫通した格子状正方孔をもつ試験片の作製を行った.レーザー照射におけるレーザー径,スキャン速度スキャン幅をパラメーターとし,最適条件の探索を行った.その結果,120ミクロンメーター角の正方孔を格子状に作成することに成功した.試料の外形サイズは1センチメートル角と大きく,降伏応力,弾性率とも方位(貫通孔と応力軸の方位関係)を変えて実測することが出来た.貫通孔と応力軸が平行とすると,正方孔が貫通していない場合,相対密度の増加とともに降伏応力,弾性率とも増大するが,正方孔が貫通している場合,相対密度に関わりなく,降伏応力は200MPa,弾性率は40MPa程度である.弾性率を増加させずに降伏応力の向上を図るため,積層造形時に酸素,窒素ガスを導入し,固溶強化を図った.これにより,弾性率は僅かに増加したが,降伏応力は20%もの大きな増加を示した.これらにより,軽量構造材料としてのポーラス金属の設計,製造に積層造形法が有用であることが明らかである.
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