Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
統合失調症や自閉症の大規模ゲノム研究において、患者には弧発性de novoの遺伝子変異が多く見られることから、これら精神疾患とゲノム不安定性との関連が重要視されている。しかし、統合失調症におけるゲノム不安定性の神経科学的意味やその変異細胞の分布(生殖細胞列vs体細胞系列)は不明のままであった。そこで本研究では、ヒト脳神経細胞での体細胞ゲノムの不安定性を評価し、統合失調症との関連を分析することにした。本年度は、統合失調症患者と精神疾患に罹患していない患者からの凍結死後脳(各50例)の脳ゲノムDNAを用いて、そのゲノムコピー数変異解析を実施した。アジレント社の1M・DNAマイクロアレイを使ってこの50ペアのDNAに対して、コピー数変異解析を実施した。ADAM2アルゴリズムを用いて閾値6.0でゲノムコピー数変異の遺伝子領域を検索したところ、1ペアの比較で大体100箇所のゲノムコピー数変異領域が検出された。その半数以上が既知のヒト個人に由来するコピー数変異領域と一致した。ゲノムコピー数変異を閾値5.0に落として50ペアの解析結果から、疾患群に共通する(浸透率の高い)ゲノム領域を探索した。その結果、報告のある染色体6番の組織適合性抗原遺伝子を含む約6ゲノム領域が疾患関連のコピー数変異領域として同定された。現在、個々のコピー数変異データを前年度に得られた不安定マイクロサテライト領域と対比させ、体細胞ゲノム不安定と関連しているか分析中である。