Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、申請者によって提案された、現実の有限で揺らぎのある世界においても定量的な安全性を初めて保証したデコイ法量子鍵配送プロトコルを拡張し、量子暗号通信の標準化された理論を構築するために、まず初めに量子デバイスの時間変動特性を実験的に検証した。現在の量子デバイスには技術的な問題のためデバイスの物理特性の時間揺らぎが大きく、その揺らぎと盗聴者の攻撃の影響を安全性の観点からは区別できないため、揺らぎの大きさや特性は量子鍵配送プロトコルの安全性に大きく影響を与える。本実験では、受信器内の光子の検出効率やダークカウントレートといった物理特性を詳細に調べ、従来仮定されていたポアソン分布に従わず、周期的な振る舞いやランダム分布に従うことを明らかにした。そのためポアソン分布を仮定した従来の評価では必ずしも安全性を保証出来ないことを示し、物理特性の最悪値を用いた別の安全性評価を提案した。さらに、量子鍵配送プロトコルの盗聴攻撃に対する現実的な安全性を評価するために、世界で初めて受信再送攻撃を実装し、実験的な安全性評価を行った。本実験では、理論的な評価だけでは安全性の保証の難しい、量子デバイスの時間変動特性に紛れた盗聴者の攻撃に対して、現在の量子デバイスでの安全性の評価を行うと共に、ポアソン分布を仮定しない場合での安全性評価が、従来の仮定の下での安全性評価と比べて、どの程度差があるのかを検証した。その結果、受信再送攻撃の下での量子鍵配送プロトコルでは、通信路の誤り率が約10%のときに、量子デバイスの時間変動特性の無い理想的な状況下での盗聴情報量の理論値92%に比べて、時間変動揺らぎに紛れた受信再送攻撃時ではポアソン分布を仮定しても盗聴情報量が最大で97%まで上がり、さらにポアソン分布を仮定できない場合では盗聴情報量が99%を見積もらないと安全性を保証できないことを、実験約に検証することに成功した。
All 2009
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