Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
カーボンナノチューブ(CNT)は薬物やペプチドの革新的な輸送体として医療応用が期待されている日本発のナノマテリアルである。しかし、これまで理工学分野における研究は盛んに行われてきたが、医療分野における研究は極めて少ない。薬物の薬効ならびに副作用発現には薬物の体内動態が大きく関わる。従って、輸送体としてのCNTの医療応用を目指す際に、CNTが薬物の体内動態に及ぼす影響を明らかにすることは必須である。そこで、本申請課題においては、今年度はCNTの薬物動態関連因子に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。第一に、単層CNT(SWCNT)の分散に関する検討を行った。SWCNTの溶解性は低く、水に分散させるためには困難を伴う。そのため、界面活性剤や溶解補助剤を用いて分散させる必要がある。しかし、細胞への暴露を考えた場合、細胞毒性を有する化合物を用いて分散することは不可能であったため、タンパク質を用いて分散を試みた。この結果、細胞培養液でSWCNTを分散させることに成功した。第二に、SWCNT分散液をヒト由来細胞に暴露することで、薬物代謝酵素と薬物トランスポーターの発現変動を網羅的に検討した。薬物代謝酵素、薬物トランスポーターともに84種の遺伝子について解析した。その結果、アルデヒドデヒドロゲナーゼやグルタチオンS-転移酵素などの複数の薬物代謝酵素の分子種の発現変動が認められた。また、薬物トランスポーターに関しては、複数のsolute carrier transporterとATP-binding cassette transporterの遺伝子の発現変動が認められた。以上より、本申請課題において、SWCNTは薬物代謝酵素ならびに薬物トランスポーターの発現に影響を及ぼすことを明らかにした。
All 2010
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