Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
腎糸球体の毛細血管壁は、糸球体内皮細胞、基底膜、糸球体上皮細胞(ポドサイト)の三層構造で形成され、1日に約160Lの原尿を排泄すると同時に、ほとんどの血漿蛋白質の透過を防ぐバリア機能を担っている。とりわけ糸球体最後の砦としてのポドサイトは高度に分化した終末分化細胞であり、細胞体から伸びた一次突起とそこから枝分かれした足突起を持ち、一見すると神経樹状突起を思わせる極めてユニークな形態を有する細胞である。さらにポドサイトの足突起間には、ネフリン等の接着分子から成るスリット膜が形成され、これがバリア機能維持に重要な役割を担っている。ポドサイト障害が蛋白尿発症ひいてはネフローゼ症候群を惹起する病因の一つであることが明らかになっているにもかかわらず、一次突起・足突起がどの様にして形成されるのか、また異なったポドサイト足突起間に形成される秩序だったスリット膜構造がどの様にして構築・維持されるのか、その分子機構に関してほとんど解明されていない。今年度は、ポドサイトの一次突起・足突起の形態・スリット膜構造がどの様な機序により形成・維持されるのかを神経樹状突起・シナプス形成機構に関わる分子として知られるephrin-Bに着目し解析を行った。免疫蛍光染色による発現解析の結果、ephrin-Bは糸球体ポドサイトに発現する一方、その受容体であるEph-Bはボウマン嚢上皮細胞に強い発現が認められたが糸球体での発現は確認されなかった。またephrin-B1はネフリンと細胞外領域を介して結合していることが確認された。以上の結果から、ポドサイトに発現しているephrin-B1はネフリンと複合体を形成し、Eph-B非依存的にスリット膜のバリア構造維持に重要な役割を果たしていると考えられる。
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