Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
【目的】自然発症高血圧ラット(SHR)に排尿筋過活動や前立腺肥大症が発生することが報告されている。我々は以前doxazosinの投与によりSHRの尿路生殖器の血流量は有意に増加し、低下していたNOS遺伝子の発現も有意に増強することを報告し、これらが高血圧患者に合併した下部尿路症状/前立腺肥大症の治療におけるα_1遮断薬の作用機序の一つであると推察した。今回、高血圧に関連した膀胱機能障害の発症機序を解明し、治療における新たな標的を同定するために、SHRの膀胱を用いて遺伝子発現変化を解析した。【方法】10週齢のSHRと正常血圧WKYラットにdoxazosin(30mg/kg/day)、nifedipine (30mg/kg/day)を4週間投与し、排尿パターンを観察した。ラット膀胱における遺伝子発現変化を、microarrayによる網羅的解析をもとにreal-time RT-PCR法で定量的に解析した。【結果】WKYラットに比べて、SHRの排尿回数は増加し、1回排尿量は低下していた。SHRの膀胱において、microarray解析同様にAdcy2、Adcy3、Rgs2、Rgs3、Rgs4、Arhgdiaの発現低下とArhgefl、Arhgef11、Arhgef12、Geft、Rock1、Rock2の発現増強はPCRでも確認された。排尿パターンとこれらの遺伝子発現におけるSHRとWKYラット間の差異は、doxazosinの投与により縮小したが、Arhgdia、Rock1、Rock2の発現を除き、nifedipineによる影響を受けなかった。【結論】SHRの膀胱では、G-protein signaling pathwayに関連するいくつかの遺伝子の特異的発現により、アセチルコリンなどで活性化されるG_q及びG_<12/13>を介する情報伝達系が亢進する一方、βアドレナリン受容体を介するアデニル酸シクラーゼ系は減弱している可能性が示唆され、これらがSHRにおける排尿筋過活動の一因になると推察された。α_1遮断薬はこれらの遺伝子発現を調節することが示唆され、本研究より得られた成果は、α_1遮断薬による下部尿路症状/前立腺肥大症の治療に新たな局面を開くと考えられる。
All 2010 2009
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (1 results)
J Pharmacol Sci 112
Pages: 128-134
BJU Int 105
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Life Sci 85
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