Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
手術や外傷などにより顔面神経に欠損が生じた場合、その再建には大耳介神経などを用いた自家神経移植が行われている。しかし、自家神経移植には神経採取量に限界があることや、ドナー採取部の疼痛、知覚麻痺を生じるなどの問題点がある。近年、組織工学の発展に伴い、現実的な再生医療のターゲットとして人工神経が注目されている。人工神経はドナー神経採取に伴う障害症状がなく、神経欠損部位に応じ任意の長さや太さの神経移植が可能という利点を有している。神経の再生には良好な足場とともに、神経栄養因子をはじめとした再生を促す物質の付加が必須である。そこで、この新素材の人工神経に、神経再生を促進する栄養因子を、効果的に添加した新たなハイブリット型人工神経の開発を目的としている。実験にはハートレー系モルモット(生後18~20週齢、400~500g)を用いた。ケタミンとキシラジンの筋注にて全身麻酔後、左顔面神経頬筋枝を8mm切断し、長さ1cmの人工神経によって顔面神経を再建した。人工神経の内筒にはbFGFを神経再生促進因子として添加した。実際の移植時には、人工神経両端の内腔に中枢側、末梢側それぞれの顔面神経断端を1mm挿入し、フィブリン糊を用いて固定を行った。今回用いた人工神経は生分解ポリマーをメッシュ構造に加工した新しい人工神経である。これは、生分解性ポリマーであるPLLA(ポリ乳酸)とPCL(ポリカプロラクトン)を3:1で配合した共重合体を、外筒長10mm、内径1.8mmのメッシュ構造に形成したもので、ポリマーの配合比を変化させることで、理想的な強度と柔軟性を獲得できると共に、吸収されるまでの期間を調節できるのが特徴である。今後は電気生理学検査、組織学的検査にて神経再生の程度を評価していく予定である。
All 2009
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results)
Facial Nerve Research Jpn 29
Pages: 148-150
愛媛医学 28 (2)
Pages: 50-56