Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
矯正治療での歯の移動中の痛みは、力学的負荷荷重によって引き起こされ、数日から一週間続く。この痛みは、時に矯正治療の欠点となりうる。そこで動物実験により、末梢組織の変化や中枢神経系での反応、分子メカニズムなど痛みに関する解明が行われている。これらの研究の最終的な目標は、歯の移動中の痛みの消失である。非ステロイド性の消炎鎮痛剤は効果があるものの、消化器系への副作用や歯の移動阻害の恐れがある為に受け入れがたい。また、矯正治療での歯の痛みの特徴は、持続的な荷重と繰り返し歯の移動を行うことで、慢性的に痛みの感受性が高くなることである。近年、侵害受容器であるカプサイシン受容体が新しい鎮痛方法として注目されている。カプサイシンで持続的な刺激をカプサイシン受容体に加えると、痛みに対する感受性が低下し痛覚のみの不応期を導くと考えられている。そこで本研究では、カプサイシンによる感受性の低下に着眼し、これを矯正治療中の痛みの軽減に応用することを目的とした。上記目的の為に、実験動物を用いて、カプサイシンの持続的な使用による歯の移動中の痛みに対する鎮痛効果について、高感度カメラを利用した行動学的解析を行った。結果は、カプサイシンの持続的使用により、顔のグルーミングが減少するなどの行動が見られることから、カプサイシンの鎮痛作用が見られると考えられる。より詳細なデータ解析のため、さらなる統計学的手法による解析を行っている。