Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究は、アメーバ経営を導入することによって会社の利益がどのように改善されたのか、その仕組みを検討することと、東京特殊電線株式会社および同社の中国浙江省にある子会社におけるアメーバ経営の導入実態を比較することによって、アメーバ経営の浸透を促進・阻害の共通的要因を抽出することを目的としている。本年度は、東京特殊電線株式会社の東京本社、上田事務所および中国浙江省にある子会社において、アメーバ経営の導入に関する資料収集と聞き取り調査を行ってきた。上田事務所と中国における子会社は、アメーバ経営の導入を通じ、コストを大幅に削減したことを確認できた。具体的には、社内売買の仕組みを構築することによって、市場動向をすばやく現場まで持ち込み、現場の採算意識を高めるとともに、現場では常にコストと利益を意識しながら作業するようになった。また、時間当たり採算という共通した評価指標を用い、部門間の競争を促進し、全員が一体となり、常に高い目標にチャレンジしようとする仕組みを構築できた。さらに、さまざまな会議で経営状況を徹底的に検討することで、社内で知識や情報の共有を実現もできた。しかしながら、アメーバの導入自体に関しては、上田事務所と中国における子会社には、大きな違いが見られた。其の一つとして、上田事務所では、現場の作業員を含めた全員に経営数学を公開し、アメーバ経営を浸透しているが、中国における子会社では、数字の公開はミドル管理層以上のスタッフに限られている。これは、経営上、数字を非公開することは、公開することよりメリットが大きいと考えられる。日本では、時間当たり採算表を使い、会社をガラス張りにすることによって、全員の経営参加を重要視されてはいるが、中国では、現場までに数字を公開していないにもかかわらず、現場がアメーバ経営を一つのゲームとして楽しみ、経営に参加している効果が確認できた。今後、引き続きほかの相違点を模索しながら、アメーバ経営の浸透を促進、阻害の要因を抽出する必要がある。