Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究では、ミニバンド幅の異なるGaAs/AlGaAs超格子を試料として、ミニバンド構造特有の超高速キャリアダイナミクスを、時間分解ポンプ-プローブ法を駆使して明らかにすることを目的としている。平成21年度の研究実績概要は以下の通りである。1. 超短パルスによって励起されたミニバンド状態の時間発展を詳細に観測するために、2台の波長可変チタンサファイアレーザーを用いた2色ポンプ-プローブ分光システムを用いた。始めに、半導体超格子の微小なポンプ-プローブ信号を高精度に検出できるように、既存の分光システム内に光学系および検出系を新たに導入した。次に、GaAs/AlAs超格子、及び、ミニバンドを形成していないGaAs/AlAs多重量子井戸を対象として光学実験を行った。実験では、ポンプ光およびプローブ光のエネルギーをミニバンド内で系統的に変化させ、ピコ秒時間領域におけるミニバンド状態のダイナミクスを詳細に観測した。その結果、超格子試料では、電子-重い正孔ミニバンドのΓ点での励起子の飽和に加えて、その高エネルギー側に、ミニバンド内での光励起キャリアの蓄積を示唆する信号が観測された。一方、Γ点での軽い正孔励起子のエネルギーが電子-重い正孔ミニバンド光学遷移エネルギー内に位置していることから、光励起キャリアの蓄積に関する情報を詳細に抽出するためには、レーザー光のスペクトル幅をより狭線化して測定を行う必要があることが分かった。今後は、レーザー光のスペクトル幅やミニバンド構造に配慮して、2色ポンプ-プローブ分光を継続する予定である。2. GaAs/AlGaAs超格子において、時間分解ポンプ-プローブ法により、フランツ・ケルディッシュ振動現象に起因する新規なコヒーレントダイナミクスの検出に成功した。