Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
骨粗鬆症治療において、ビスフォスフォネートは優れた治療効果を示すものの、近年、副作用として顎骨壊死を招く危険性が指摘されており、新たな治療方法の開発が求められている。本研究は、独自に開発するストロンチウム含有リン酸オクタカルシウム(Sr-OCP)/高分子ゲルの最適化を図り、骨粗鬆症に治療効果を持つSrの長期徐放を可能とする、次世代の薬物徐放担体の基礎を築く事を目的とする。平成21年度は、申請計画に基づき、Sr-OCPの合成条件の探索と、析出物のキャラクタリゼーションの基礎的知見を得た。Sr含有量の異なる数種類のSr-OCPは、既報のOCP湿式合成法(Suzuki et al.1991)を応用して、OCPとヒドロキシアパタイト(HA)に対し過飽和な条件下で、Srの初期仕込濃度を調節する事で作成を試みた。析出物のキャラクタリゼーションは、結晶学的評価をX線回折法およびフーリエ変換赤外分光光度測定(FT-IR)、Sr含有の有無をエネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて評価した。結晶形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて評価した。その結果、X線学的評価から、Srの初期仕込み濃度が高い場合は、OCPが有意に析出する条件下においても、リン酸ストロンチウムが析出する事が確認された。しかしながら、一定のSr濃度までは、OCP特有のピークが確認され、リン酸ストロンチウムを析出させないSrの閾値濃度がわかった。FT-IR測定から得られた結果も、X線学的評価に順じた結果を示した。EDSを用いた画像解析を行う事で、得られた析出物にはSrが含有されている事が確認された。また、SEM像より、ストロンチウムの初期仕込み濃度の増加は、Sr-OCPの結晶サイズを減少させる事がわかった。現在、作成したSr-OCPを用いて、Sr-OCP/高分子ゲルの合成条件の最適化に着手している。