Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究は免疫系で中心的な役割を果たす樹状細胞(DC)に注目し、タバコの煙構成成分、とりわけ主成分であるニコチンがニコチン受容体を介していかなる免疫応答を誘導するかを検索することで歯周病の病態解明をImmunopathogenesisの観点からめざすものである。ヒト末梢血液からCD14陽性単球を磁気細胞分離装置にて分離・採取して得られたCD14陽性単球を様々な濃度(0~1mM)のニコチン存在下でヒトリコンビナントIL-4(20ng/ml)とヒトリコンビナントGM-CSF(50ng/ml)添加培地で6~7日培養したものを実験に供した。ニコチン非存在下で樹状細胞(DC)に分化させたものをMoDC、ニコチン存在下で分化させたものをNiDCとした。MoDCとNiDC上に発現していると考えられる共刺激分子であるCD80、CD86、PD-L1、PD-L2、ILT3、ILT4の発現レベルをFACS法にて解析したところ、NiDCにおいて免疫抑制性シグナルを誘導するPD-L1、PD-L2、ILT3、ILT4の発現レベルが、MoDCと比較して強く発現が誘導された。またNiDCにおけるアロT細胞増殖活性の抑制も認められた。次にNiDCやMoDCと共培養したT細胞の産生するIFN-γ、IL-5、IL-10についてELISA法を用いて解析を行ったところ、NiDCでIL-5、IL-10の発現が誘導された一方で、IFN-γの産生は抑制された。これらの結果はニコチンによりDCが免疫抑制的あるいはTh2型免疫応答にシフトしていることを示唆するものであり、歯周病原性細菌刺激により惹起される樹状細胞の種々の機能に対しニコチンがなんらかの機能制御に関与しているものと考えられる。すなわち生活習慣の一つとしての喫煙と歯周病病態形成との関連性について、ニコチンが免疫系細胞の機能を制御するという点において新情報が得られたものと考えられる。